小さな恋物語




「美羽!帰ろうぜー」


教室の扉が勢い良く開いたかと思えば、聞き慣れた声が私を呼んだ。しかもそこそこの大声で。


日誌を書く手を止めてその声の主を見ると、すでにこちらに向かってきていた。


「あ、今日日直なの?もう誰もいねーじゃん」

「そう。下駄箱で待ってて。あと少しだから」

「えー。立って待ってろって?」


勇太は私の前の席の椅子に座った。高校に入ってから知り合って、今年は別々のクラス。とは言ってもすぐ隣なんだけど。

お互いにバイトがない日は時々こうして私を迎えに来る。


「もう一人のヤツは?」

「部活。でも半分書いてくれてたから楽だよ」

「ふーん。お前、最後押し付けられて損じゃん」

「何で?まとめを書いて職員室に持って行くだけだよ。私はこっちの方が全然いいけど」


もう一人の日直である男子は部活があるからと早々に行ってしまった。


「ていうか勇太は何でまだ残ってるの?もううちのクラスなんて誰もいないのに」
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