小さな恋物語
ふわふわのパンケーキは一枚ずつ時間をかけて焼くから、注文してから20分もかかるらしい。それでもフルーツと生クリームがたくさんのパンケーキは魅力的。
「あー、こういう時間もあと少しなんだよね」
「何で」
勇太は不思議そうな顔で聞き返してくる。
「だって、大学に入ったら今よりずっと忙しくなるじゃない?」
「俺は大学行っても美羽と会う時間は絶対確保するけど」
「勇太モテるからなー。すぐ彼女出来るよ」
私はごく普通に言ったのに、勇太はものすごく怒った顔をしている。眉間にシワが寄って、ぶすっとして。
「美羽は全然気づかないの?俺は何とも思ってないヤツとは二人で出かけたりしない。好きじゃないヤツにモテても何も嬉しくない」
「…ごめん」
3年も一緒にいるけど、勇太が怒ってるところなんて初めてだ…。
「謝ってほしくない。俺、甘いものなんてそんなに好きじゃなかったし、そもそも忘れ物なんてしたこともない」
「は?たまに忘れ物して借りに来るじゃん」
昨日だって教科書貸してって。先週はカラーペンを貸したし。