小さな恋物語
「美羽、食べないと。せっかくこんなにふわふわなのに」
真ん丸でふんわりした厚みのあるパンケーキが3枚重なっていて、周りに生クリームとフルーツが添えられている。
勇太はナイフとフォークで器用に切り分けると、シロップをかけてフルーツと一緒に口に運んだ。
「うめっ!何これ。噛まなくても食べれる」
「…勇太。私の答えは聞かないの?」
「俺は美羽も同じ気持ちじゃないかなって思ってるけど。自惚れ?」
勇太はくしゃっとした顔で笑った。
自惚れなんかじゃない。一番最初に名前を聞かれたとき、多分私は勇太に惹かれていたと思う。
いつどんな時も優しい声で『美羽』って呼ぶ。勇太を好きな女子には見せない、くしゃっとした笑顔を私には見せる。一緒に歩くときは必ず私が危なくないように気を使ってくれて、段差では手を取ってくれる。
「俺はこれからも美羽と一緒にいたいし、美羽と二人で帰りたいと思ってる。俺みたいに優しい彼氏はそうそういないからな」
自信たっぷりに言うから思わず笑ってしまった。