小さな恋物語
その男は彼女の大学の先輩で、飲み会をきっかけに仲良くなり、惹かれ合い一線を越えてしまった…らしい。それでも優吾のことも好きで二股をかけていて。そのせいで優吾は恋愛に対して恐怖心が大きくなり、踏み出せなくなってしまった。
「正直、また同じような目に遭ったらって恐怖はどっかにある。俺、ずっと侑美に甘えてた。ごめん…。こんな情けない理由で侑美を失うのは嫌だよ」
「じゃあどうするの?私達はこれから」
「他の男の所には行くな」
思わずふふっと笑ってしまうと優吾に抱き寄せられた。頭の上から、笑ってんじゃねえと声が降ってくる。
「だって、こんな優吾見たことないから。普段怒らないし、マジなトーンも聞いたことなかったし」
「侑美を奪われるって思ったら頭にカーッと血が上って」
抱き寄せられていた体が離れると、優吾は恥ずかしそうに笑っていた。
「たまにじゃなくて、毎日来て」
「毎日?私も仕事してるんだけどな。残業する日だってあるよ?ヘロヘロになってる日もあるし」