小さな恋物語
「泣きそう」
「何で泣くのよ?ほら、ちょっとどいて。洗濯しちゃいたいから」
久々に人の優しさに触れたような気がする。本当に気を張っていたんだなぁ。大きな仕事を任されてガムシャラにやっていたから、息付く暇もなかった。
実紅は手際良くソファーカバーを取り替えると、すぐに3回目の洗濯を始めた。
「実紅~」
名前を呼ぶと少しして洗面所から戻って来てくれた。
「どうしたの」
「いいからちょっと来て」
床に座ったままの僕の目の前にしゃがんだ実紅を、ぎゅっと抱きしめた。
「ありがとう」
「いきなりどうしたの?」
実紅が動くから、ふわふわした髪が頬に当たってくすぐったい。
「僕のこと分かってくれてて、世話も焼いてくれてありがとう」
「そうだね。他の人だったら良平はとっくにフラれてるよ」