小さな恋物語
一日中社内にいると息がつまりそうで。だから外で過ごせる陽気の昼休みはいつも会社の敷地内の木陰を選んで、そこでご飯を食べる。
今日はサンドイッチとサラダとアイスコーヒー。
「大橋、まだそんなとこで昼飯食ってんの」
鼻にかかった独特の声に振り向くと、コンビニのビニール袋を手にした加藤さんがいた。
私の5つ上、凹凸のハッキリした端正な顔と硬派なところがモテる人で、いつもセンスの良いスーツを着ている。全体にモノトーンだったりネクタイを差し色にしていたり、ちょっと派手な柄シャツを着ていたり。どれも良く似合う。
「外の空気が吸いたくて」
「ここ、いい?」
私が返事をしないうちに少し距離を空けてベンチに座ってしまった。
「最近何かあった?」
「えっ、どうしてですか?」
自分では普段通りいつもと変わりなく仕事をしているつもりだ。
「うーん、何か違うっていうか。お前、明るいし人当たりもいいけど、ここんとこちょっと篭ってるっていうか」
…誰も気づかないような事をどうしてこの人は気づいてしまうんだろう。