初恋の人は人魚×アイドル!?
「……っ」
目を開けると保健室の白い天井とソラの不安げな顔が飛び込んできた。
本日、二回目の保健室……。
「大丈夫?」
そういってギュッと手を握ってくる。
ああ、前よりもずっと胸のあたりが痛いんですケド。
「大丈夫?苦しいの?」
「ああ、全然……平気……って、今四時!?あれ、私、一時頃にナギを……」
そんなに時間たってるんだ……。もう、体育祭終わりじゃん……。
そんなことを思ったのもつかの間。
カーテンの外から騒がしい声が聞こえてくる。
「ああ?お前、誰に口聞いてんだよ。」
「はあ?あんたこそ誰に口きいてんの。ぶっ飛ばすわよ」
とても平和的とはいえないその会話にヒヤヒヤしながらカーテンをあけるとケンカ真っ只中という感じのユータとともちゃんがいる。
いかにも相性あわなさそうな二人だが。
「あ、あの~……」
おそるおそる声をかけるとソファに座っていたヨウが立ち上がり二人の間にわってはいる。
「ほらほら、莉音ちゃん起きたよ。ケンカは後からね」
「そうね。後から、ね」
そういうともちゃんの顔は笑っていない。
「ああ。後から、な」
そういうユータの笑顔も怖い。
「で、莉音大丈夫なわけ?」
こちらをみつめるともちゃんの表情は優しい。
「うん。平気。なんか、ごめんね……最近」
そういったところでナギが後方にいるのをみつける。
「あ、ナギ、さっきは……」
なにもいわずにぷいっと顔を背け保健室をでていくナギ。
「え……」
「気分悪そうだったし、気にしないであげて、ね」
そういって肩を抱いてくるヨウの手を振り払う元気もない。
なんで、なんにもいってくれなかったんだろう。
そればかりが気になって泣きながらナギが廊下をかけていってたことなんて気づきもしなかった。
ましてや、それを満足気に見つめる人がいたなんてなにもきづけないくて。
ほんとうに私は無知だったんだーー。
黒ブチメガネをかけたその人はスタスタとナギの走っていった方向へ歩んでいった。
ナギは彼の予想どおり中庭の池のほとりにいた。
彼に気づいたように声を上げるナギ。
「僕……もうやだよ……こんな自分がやだ」
そういって苦しげに胸をおさえる。
「きづくと、『あいつ』が彼女の……彼女の」
「別にいいじゃないか。彼女のあれをとりだしたところで彼女は死なない」
「でも……あいつ、すごく苦しそうだった!僕、こんなのやだよ……」
二つの人格をもってしまった彼に一人の女性を愛し通せるはずがない。
彼はクイッとメガネをおしあげ、微笑んだ。
「平気ですよ。もう一人、味方がいますからね」
閉会式も無事終わり……。SUNNY'Sファンも無事帰り……。
「ふう〜、疲れたあ。」
本来なら三時には帰れたのだが、SUNNY'Sファンが帰らないために警察が交通整理までして六時になってしまった。
「じゃあね、莉音。途中でぶっ倒れるんじゃないわよ。」
「ん、うん。ともちゃんそっちから帰るの?なら、私も」
「すこし、やることがあるのよ。まあ、気にしないで」
その朗らか極まりない笑みに状況を察する。
やっぱり、ユータのことかな……。
ともちゃんVSユータのドリームマッチを見物したいのは山々だが、興味本位でいけば確実に巻き添えをくらうだろう。
「じゃあ、私いつものほうから帰るから。じゃあね」
「ええ。またね」
そういって手を振ると軽やかなスキップで体育館裏につながる道を進むともちゃんであった。
今日なんか面白い番組あったかなあ……。
そんなことを考えなからテクテク歩く帰路。
「莉音!一緒に帰らない?」
そう唐突に声をかけてきたのはれん兄で、心臓がドキンと飛び上がったのが自分でもよくわかる。
「う、うん!帰ろ!!」
どうしよ。なんか話さないと……
「れん兄、今日疲れた?」
「うん。まあ、疲れたかな」
そういってはにかむれん兄を夕焼けが照らす。
ああ、かっこいいよ……。
「推薦で実行委員にもなっちゃったしね。やることがたくさん。」
実行委員だったんだ。しっかりしているれん兄らしくて思わず微笑む。
それにしても、れん兄は大人だなあ……。SUNNY'Sのヤツらとは雰囲気が違うもん。
こんな人の隣を歩けていることが嬉しくて思わずニヤけてくる。
「ん?どうかした?」
「う、ううん!なんでもないよ!」
やばい、なんて取り繕えば……
「れん兄、肩ももっか?」
でてきたのはそんな言葉で。
れん兄は一瞬驚いたような表情になったけどすぐに優しく微笑んだ。
「じゃあ、お願いできる?帰ったら莉音の家にいくよ」
私が「うんっ!」そういって笑いかけようとすると私とれん兄の間に割って入る白く細い手。
「先輩……ちょっとこいつ借りていいっすか」
え?後ろにいたのはナギくんで腕を掴む手に力がこめられる。
……ナ、ナギ君目がこわい。怒ってるの?って爪!!爪が食い込んでる!!
れん兄の眉が一瞬ピクリと動いたような気がしたけどれん兄はすぐに優しく微笑んだ。
「どうぞ」
どこか冷たい声でそういうれん兄に焦っているとれん兄がこちらを向いてニコリと微笑む。
「じゃあ、また後でね」
「う、うん!!」
そのたった一言が嬉しくて思わずしどろもどろになる。
スタスタと去っていくれん兄に見惚れていると後頭部に思い切りデコピンされる。
「いった!!なにすんのよ!!」
「あいつは危険なんだよ……」
後半消え入るようにそういうナギ。
「前もそんなこといってたけど、どこも危険じゃないから!!」
ムスッとしてそういうと、ナギは悲しそうな表情になる。
「まあ、僕がいえたことじゃないしね。」
え……なんでこんな弱気っていうか元気ないの……。
普段だったら口喧嘩になるのに。焦ってなにかいおうとしているとナギが先に口をひらく。
「僕の家にきなよ。」
「………………」
?なんていったの、こいつ。……聞き間違いだよね……
「あの……もう一回いってくれない?」
「だから、うちに住めっていってるんだよ」
徐々に赤くなっていくナギの耳。
え、マジなの!?
「ええええ!?」
「うっさい、バカ」
「え、だ、だっていきなりすぎない!?
同居ってことでしょ!?」
もう脳内パニックである。
「お前の家は危険だから。僕の家のほうがまし。僕たち、SUNNY'Sでかくまう、ってそういう話」
いや、え、全然わかんないし。
「あの……まさかかとは思いますが家にご両親は?」
「いないけど」
「兄弟とかペットも!?」
「いない。みんな、海の中だよ」
「あ、そっか……」
……だとしたら二人で一つ屋根の下っていう状況に……
ナギはハアーと深くため息をつくと困ったような表情でこちらをみつめてくる。
「お前のこと、少しでも守りたい。僕にできることは限られてるけどね」
夕日に照らされて薄茶色になったナギの目はとても真剣で。
なにから守りたいのかなんて全然わからないし、ナギがなんでそんなにも悲しそうなのかわからなかったけど私はうなずくしかなかった……。
目を開けると保健室の白い天井とソラの不安げな顔が飛び込んできた。
本日、二回目の保健室……。
「大丈夫?」
そういってギュッと手を握ってくる。
ああ、前よりもずっと胸のあたりが痛いんですケド。
「大丈夫?苦しいの?」
「ああ、全然……平気……って、今四時!?あれ、私、一時頃にナギを……」
そんなに時間たってるんだ……。もう、体育祭終わりじゃん……。
そんなことを思ったのもつかの間。
カーテンの外から騒がしい声が聞こえてくる。
「ああ?お前、誰に口聞いてんだよ。」
「はあ?あんたこそ誰に口きいてんの。ぶっ飛ばすわよ」
とても平和的とはいえないその会話にヒヤヒヤしながらカーテンをあけるとケンカ真っ只中という感じのユータとともちゃんがいる。
いかにも相性あわなさそうな二人だが。
「あ、あの~……」
おそるおそる声をかけるとソファに座っていたヨウが立ち上がり二人の間にわってはいる。
「ほらほら、莉音ちゃん起きたよ。ケンカは後からね」
「そうね。後から、ね」
そういうともちゃんの顔は笑っていない。
「ああ。後から、な」
そういうユータの笑顔も怖い。
「で、莉音大丈夫なわけ?」
こちらをみつめるともちゃんの表情は優しい。
「うん。平気。なんか、ごめんね……最近」
そういったところでナギが後方にいるのをみつける。
「あ、ナギ、さっきは……」
なにもいわずにぷいっと顔を背け保健室をでていくナギ。
「え……」
「気分悪そうだったし、気にしないであげて、ね」
そういって肩を抱いてくるヨウの手を振り払う元気もない。
なんで、なんにもいってくれなかったんだろう。
そればかりが気になって泣きながらナギが廊下をかけていってたことなんて気づきもしなかった。
ましてや、それを満足気に見つめる人がいたなんてなにもきづけないくて。
ほんとうに私は無知だったんだーー。
黒ブチメガネをかけたその人はスタスタとナギの走っていった方向へ歩んでいった。
ナギは彼の予想どおり中庭の池のほとりにいた。
彼に気づいたように声を上げるナギ。
「僕……もうやだよ……こんな自分がやだ」
そういって苦しげに胸をおさえる。
「きづくと、『あいつ』が彼女の……彼女の」
「別にいいじゃないか。彼女のあれをとりだしたところで彼女は死なない」
「でも……あいつ、すごく苦しそうだった!僕、こんなのやだよ……」
二つの人格をもってしまった彼に一人の女性を愛し通せるはずがない。
彼はクイッとメガネをおしあげ、微笑んだ。
「平気ですよ。もう一人、味方がいますからね」
閉会式も無事終わり……。SUNNY'Sファンも無事帰り……。
「ふう〜、疲れたあ。」
本来なら三時には帰れたのだが、SUNNY'Sファンが帰らないために警察が交通整理までして六時になってしまった。
「じゃあね、莉音。途中でぶっ倒れるんじゃないわよ。」
「ん、うん。ともちゃんそっちから帰るの?なら、私も」
「すこし、やることがあるのよ。まあ、気にしないで」
その朗らか極まりない笑みに状況を察する。
やっぱり、ユータのことかな……。
ともちゃんVSユータのドリームマッチを見物したいのは山々だが、興味本位でいけば確実に巻き添えをくらうだろう。
「じゃあ、私いつものほうから帰るから。じゃあね」
「ええ。またね」
そういって手を振ると軽やかなスキップで体育館裏につながる道を進むともちゃんであった。
今日なんか面白い番組あったかなあ……。
そんなことを考えなからテクテク歩く帰路。
「莉音!一緒に帰らない?」
そう唐突に声をかけてきたのはれん兄で、心臓がドキンと飛び上がったのが自分でもよくわかる。
「う、うん!帰ろ!!」
どうしよ。なんか話さないと……
「れん兄、今日疲れた?」
「うん。まあ、疲れたかな」
そういってはにかむれん兄を夕焼けが照らす。
ああ、かっこいいよ……。
「推薦で実行委員にもなっちゃったしね。やることがたくさん。」
実行委員だったんだ。しっかりしているれん兄らしくて思わず微笑む。
それにしても、れん兄は大人だなあ……。SUNNY'Sのヤツらとは雰囲気が違うもん。
こんな人の隣を歩けていることが嬉しくて思わずニヤけてくる。
「ん?どうかした?」
「う、ううん!なんでもないよ!」
やばい、なんて取り繕えば……
「れん兄、肩ももっか?」
でてきたのはそんな言葉で。
れん兄は一瞬驚いたような表情になったけどすぐに優しく微笑んだ。
「じゃあ、お願いできる?帰ったら莉音の家にいくよ」
私が「うんっ!」そういって笑いかけようとすると私とれん兄の間に割って入る白く細い手。
「先輩……ちょっとこいつ借りていいっすか」
え?後ろにいたのはナギくんで腕を掴む手に力がこめられる。
……ナ、ナギ君目がこわい。怒ってるの?って爪!!爪が食い込んでる!!
れん兄の眉が一瞬ピクリと動いたような気がしたけどれん兄はすぐに優しく微笑んだ。
「どうぞ」
どこか冷たい声でそういうれん兄に焦っているとれん兄がこちらを向いてニコリと微笑む。
「じゃあ、また後でね」
「う、うん!!」
そのたった一言が嬉しくて思わずしどろもどろになる。
スタスタと去っていくれん兄に見惚れていると後頭部に思い切りデコピンされる。
「いった!!なにすんのよ!!」
「あいつは危険なんだよ……」
後半消え入るようにそういうナギ。
「前もそんなこといってたけど、どこも危険じゃないから!!」
ムスッとしてそういうと、ナギは悲しそうな表情になる。
「まあ、僕がいえたことじゃないしね。」
え……なんでこんな弱気っていうか元気ないの……。
普段だったら口喧嘩になるのに。焦ってなにかいおうとしているとナギが先に口をひらく。
「僕の家にきなよ。」
「………………」
?なんていったの、こいつ。……聞き間違いだよね……
「あの……もう一回いってくれない?」
「だから、うちに住めっていってるんだよ」
徐々に赤くなっていくナギの耳。
え、マジなの!?
「ええええ!?」
「うっさい、バカ」
「え、だ、だっていきなりすぎない!?
同居ってことでしょ!?」
もう脳内パニックである。
「お前の家は危険だから。僕の家のほうがまし。僕たち、SUNNY'Sでかくまう、ってそういう話」
いや、え、全然わかんないし。
「あの……まさかかとは思いますが家にご両親は?」
「いないけど」
「兄弟とかペットも!?」
「いない。みんな、海の中だよ」
「あ、そっか……」
……だとしたら二人で一つ屋根の下っていう状況に……
ナギはハアーと深くため息をつくと困ったような表情でこちらをみつめてくる。
「お前のこと、少しでも守りたい。僕にできることは限られてるけどね」
夕日に照らされて薄茶色になったナギの目はとても真剣で。
なにから守りたいのかなんて全然わからないし、ナギがなんでそんなにも悲しそうなのかわからなかったけど私はうなずくしかなかった……。