初恋の人は人魚×アイドル!?
 ナギは文字通りトボトボと帰宅していた。
 SUNNY'Sを抜ける⋯⋯か⋯⋯
 考えたこともなかったな。
 でも、僕の目的は彼女を消すことだし⋯⋯。
 ダンッ
 きづいたら、マンションの階段の途中で壁を思い切り殴っていた。
 痛い⋯⋯痛いよ⋯⋯
 こぶしも、心もーー。
 心臓がバクバクと音をたてる。
 彼女に触れるたび、彼女が僕の中で溢れていく。
 でも、僕の中には「やつ」もいて、日に日に「やつ」の影響が強くなっていく。
 大粒の涙がポタポタと落ちる。
「僕も⋯⋯人に生まれたかった⋯⋯そしてら、君に⋯⋯」
 伝えられたかもしれないのに。
 ごまかさずに、素直な気持ちをーー。



〜ソラ〜
「〜〜♪〜〜♪」
 気分よく鼻歌を歌いながら夜の街を歩く。
 今日は、ちょうどネクの家の近くでロケがあったので帰りに寄ってついでに夜ご飯をもらえないかな、と言う感じだ。
 ネクの家には、幼なじみであるユータとヨウが居候という形で暮らしているのだが、ネク自身いい人で気にしてないのと二人があまりにも溶け込んでいることから一瞬三人の家かと間違う程だ。
 
 ネクの住む高級マンションのエレベーターに乗ること数分。
 ネクの家が見えてくる。
 
ピンポーン

「はーい」
 出てきたのはヨウ。口に歯ブラシを加えていてラフなパジャマ姿という完全なる 無防備な状態だ。
「ソラ、どうしたの?こんな時間に」
「ちょうど、ロケの収録がここの近くであって。ネクのご飯食べたいな、なんて」
 そういってニコリと微笑む。
「ああ。余ってるからいんじゃね?莉音ちゃんもいるよ〜」
「えっ?ほんとに!?ナギの家、出たんだ!」
 なんだか、それが嬉しくてふわふわした気分になってくる。
「り〜お〜ん〜ちゃ〜ん♪」
 スキップでリビングにいくと、唐突に人にぶつかってしまう。
「あ、ごめんねえ。」
 莉音ちゃんだったらいいな、なんて思いながら謝ると、僕の下敷きになっていたその人は鼓膜が破けるぐらいの大声で
「いいから、どけろ!!」
という。
「ユータンかあ⋯⋯残念⋯⋯」
「なにが残念なんだよ!いいから、よけろ!」
「ああ、うん」
 そういってユータからおりると、すぐそこのソファに座っているネクに
「莉音は?」
とたずねる。
「ああ。莉音なら、風呂だ。」
「結構時間たってるからそろそろでてくるんじゃない〜?」
 そういうヨウの手にはお盆があって、そこに湯気をだす美味しそうなご飯たち。
「わあ〜!美味しそう!!今日はなあに〜?」
 立ち上がり、お皿の中をのぞき込む。そこには美味しそうな肉じゃがが。
「さすが、ネクだね」
「うちのママンだからね〜」
とふざけていうヨウに
「ママンはやめろ」
というネク。
 そんな暖かい空気の中、僕は食卓につく。
「んー!美味しい!!」
 もぐもぐと肉じゃがを頬張っているとあることが気になりだす。
「ねえ、みんなは、もう覗きにいったの?」
「ブフォーーッ」
  三人の噴き出す音がシンクロする。
 ほんとに仲良しさんだなあ。
「な、ソラ、あまりハレンチなことはいうな!」
というネクにユータが続く。
「そうだぞ!第一、あいつ、前と後ろの区別もつかねえし。見たって得はねえよ」
「でも、莉音ちゃんのだから意味があるんじゃないかな」
「なっ⋯⋯」
 その天然発言にどひもをぬかれた二人がが立ち尽くしているとヨウが噴き出す。
「ソラ、最高」
 クスクスいいながら苦しそうに腹をおさえる。ツボったらしい。が⋯⋯
「なにが、最高なのかな」
「え?⋯⋯」
 その声にヨウの笑いはとまり、ユータとネクの顔から血の気がひいてく。
「なにが、最高だったのか、詳しく教えてくれる?」




〜莉音〜
「あのさあ⋯⋯」
 横一列に並んだ男ども(仮にもアイドル)
「覗きしようとするってなにそれ。気持ち悪いんだけど」
「別にしてないだろ!少し話してただけで!」
というユータを一瞥する。
「ユータ⋯⋯ううん。サルゴリ」
「な、なんだよ」
「あんた、前と後ろの区別がつかないってどういうことよ!」
「それはお前が貧乳だから」
 ゴツンッと響くげんこつ音。
「もう、ほんと最悪!みんな、でてって!」
「えっ?莉音、ここは一応俺の家で」
「ごちゃごちゃいってないではやくでてってよ!」
「は、はい!」

 結局、四人は家を出され、ひどく虚しい夜を過ごすことになった⋯⋯。
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