初恋の人は人魚×アイドル!?
私は一人歩きながら悶々とひとつのことを考えていた。
「告白⋯⋯か⋯⋯」
れん兄に告白⋯⋯。考えられないな。というか、告白しても優しい笑顔でかわされそう。
「でも⋯⋯したい⋯⋯」
れん兄と付き合える!なんて分相応な夢を信じられるほど私はポジティブじゃない。
それでも⋯⋯。
れん兄にこの想いを伝えたい。
でも、ナギのいってたことが本当なら 泡になって消えちゃうんだ⋯⋯。
嫌だなあ、それ⋯⋯。
「歌⋯⋯」
ふいに口をでた言葉。
最近私を満たしている「歌いたい」という衝動。
この衝動のままに歌で伝えて⋯⋯。
最悪、泡になって消えても構わない気がした。
そう思いたった途端に私は駆け出した。
家に帰るとすぐにリビングにあるピアノ(たまに父さんが使ってる)にむけ駆け出す。
今の、この瞬間の気持ちを、ただ形にしたくてーー。
「姉ちゃん、いきなりどうしたの?⋯⋯」
ふと顔をあげれば風雅がいる。
ソファに座り手紙を読んでいたらしい。
頭の中が「歌いたい」ばかりだったので、風雅の存在に全く気づかなかった。
「まあ、いろいろよ」
などと適当な言い訳をしてピアノをひこうとするが、風雅の前に山積みになった手紙に目がいく。山積みになるくらいの手紙って⋯⋯
「なにそれ」
そうたずねると風雅は若干ニヤつきながら頬を朱に染める。
「ファンレター⋯⋯」
「はあっ!?」
風雅にファン?⋯⋯⋯⋯
「それほんとなの?」
「当たり前だろ!」
そう胸を張って答える風雅をいぶがしげに見つめる。本当なのだろうか。風雅にファンだなんて、にわかには信じがたい。
私は無言で立ち上がると風雅の元に行き、その手に握られていた手紙を奪い取った。
「なっ、やめろよ!」
そういって私の手に渡った手紙を奪いに来る風雅。
私はそれを片方の手で制しながら、手紙に目を通す。
『フウガくん、大好きです!初めてHRNの歌を聞いたときからフウガくんのファンです!!⋯⋯』
可愛らしい丸文字で書かれたその文面に絶句する。
「ま、まじだ⋯⋯」
放心して風雅をおさえていた手の力が抜けると、すごい勢いで手紙をぶんどられる。
「だからいったろ!ったく⋯⋯」
そういってブツブツと独り言をいいながらソファに座る。
今にはじまったことではないが、相も変わらずひどい独り言である。
私が気を取直してピアノに向かおうとすると風雅からお声がかかる。
はやく歌いたいたいのだが⋯⋯
「あのさ、俺、今アイドルじゃん⋯⋯」
なにをいまさら、と思いながら「そうだね」と答える。
「まなみんに会えるかな⋯⋯」
まなみんとは弟の大好きなグラビアアイドルである。
私も一度弟のベッドに開かれたままになっていた雑誌(あえてエロ本とはいわない)でみたことがあるが⋯⋯。
本当に⋯⋯女なら誰もが羨むようなスタイルだと思う。
だが、素性が明かされておらず、いつもサングラスをかけ顔を隠すようなスタイルの写真ばかりなのでどこか怪しげだった。
まあ、風雅はそういうところも好きなんだろうけど⋯⋯。
「まあ、会えるんじゃない?」
適当にそんなことをいうと風雅の目の輝きが半端なくなる。
ああ、まずいことをしてしまったかなあ⋯⋯なんて思っていると
「俺!まなみんに会うために頑張る!!」
と意気込む弟。
なんだかいたたまれなくなってきたのでいよいよピアノに向き合う。
白い鍵盤にそっと指をおく。
「ふぅ〜⋯⋯」
ひとつ息を吐き出すと私は止まらない「歌いたい」という衝動のままに歌い出した。
♪いつの日からだろう あなたは私の隣にいてくれたね 温かくて 優しくて あなたと離れてる間 あなたがいないことの辛さを知ったよ⋯⋯♪
私の指は流れるようなあたたかいメロディを奏でだし、秘めていた感情がそのあたたかなメロディにとけてくように、声になって歌になって紡ぎだされていく。
歌い終えると額に浮かんだ汗をぬぐう。
「すげえ⋯⋯」
その声に顔をあげれば風雅がいる。
「流石人魚のーじゃなねえ!」
と慌てたようにブンブンと手をふる風雅。
「でも⋯⋯まじですごいと思う。姉ちゃん、だれ想って歌ってんの?」
そうたずねられ思わず視線をはずす。
「いや、それは企業秘密だけど⋯⋯」
風雅は笑って「どーせ、ナギだろ」といってくる。
何故かその言葉に胸の奥がズキリといたんだ。
でも、私はそれを、ごまかすように笑って
「へっへ〜ん。まったく違う人でーす」
そう、いった⋯⋯。
「告白⋯⋯か⋯⋯」
れん兄に告白⋯⋯。考えられないな。というか、告白しても優しい笑顔でかわされそう。
「でも⋯⋯したい⋯⋯」
れん兄と付き合える!なんて分相応な夢を信じられるほど私はポジティブじゃない。
それでも⋯⋯。
れん兄にこの想いを伝えたい。
でも、ナギのいってたことが本当なら 泡になって消えちゃうんだ⋯⋯。
嫌だなあ、それ⋯⋯。
「歌⋯⋯」
ふいに口をでた言葉。
最近私を満たしている「歌いたい」という衝動。
この衝動のままに歌で伝えて⋯⋯。
最悪、泡になって消えても構わない気がした。
そう思いたった途端に私は駆け出した。
家に帰るとすぐにリビングにあるピアノ(たまに父さんが使ってる)にむけ駆け出す。
今の、この瞬間の気持ちを、ただ形にしたくてーー。
「姉ちゃん、いきなりどうしたの?⋯⋯」
ふと顔をあげれば風雅がいる。
ソファに座り手紙を読んでいたらしい。
頭の中が「歌いたい」ばかりだったので、風雅の存在に全く気づかなかった。
「まあ、いろいろよ」
などと適当な言い訳をしてピアノをひこうとするが、風雅の前に山積みになった手紙に目がいく。山積みになるくらいの手紙って⋯⋯
「なにそれ」
そうたずねると風雅は若干ニヤつきながら頬を朱に染める。
「ファンレター⋯⋯」
「はあっ!?」
風雅にファン?⋯⋯⋯⋯
「それほんとなの?」
「当たり前だろ!」
そう胸を張って答える風雅をいぶがしげに見つめる。本当なのだろうか。風雅にファンだなんて、にわかには信じがたい。
私は無言で立ち上がると風雅の元に行き、その手に握られていた手紙を奪い取った。
「なっ、やめろよ!」
そういって私の手に渡った手紙を奪いに来る風雅。
私はそれを片方の手で制しながら、手紙に目を通す。
『フウガくん、大好きです!初めてHRNの歌を聞いたときからフウガくんのファンです!!⋯⋯』
可愛らしい丸文字で書かれたその文面に絶句する。
「ま、まじだ⋯⋯」
放心して風雅をおさえていた手の力が抜けると、すごい勢いで手紙をぶんどられる。
「だからいったろ!ったく⋯⋯」
そういってブツブツと独り言をいいながらソファに座る。
今にはじまったことではないが、相も変わらずひどい独り言である。
私が気を取直してピアノに向かおうとすると風雅からお声がかかる。
はやく歌いたいたいのだが⋯⋯
「あのさ、俺、今アイドルじゃん⋯⋯」
なにをいまさら、と思いながら「そうだね」と答える。
「まなみんに会えるかな⋯⋯」
まなみんとは弟の大好きなグラビアアイドルである。
私も一度弟のベッドに開かれたままになっていた雑誌(あえてエロ本とはいわない)でみたことがあるが⋯⋯。
本当に⋯⋯女なら誰もが羨むようなスタイルだと思う。
だが、素性が明かされておらず、いつもサングラスをかけ顔を隠すようなスタイルの写真ばかりなのでどこか怪しげだった。
まあ、風雅はそういうところも好きなんだろうけど⋯⋯。
「まあ、会えるんじゃない?」
適当にそんなことをいうと風雅の目の輝きが半端なくなる。
ああ、まずいことをしてしまったかなあ⋯⋯なんて思っていると
「俺!まなみんに会うために頑張る!!」
と意気込む弟。
なんだかいたたまれなくなってきたのでいよいよピアノに向き合う。
白い鍵盤にそっと指をおく。
「ふぅ〜⋯⋯」
ひとつ息を吐き出すと私は止まらない「歌いたい」という衝動のままに歌い出した。
♪いつの日からだろう あなたは私の隣にいてくれたね 温かくて 優しくて あなたと離れてる間 あなたがいないことの辛さを知ったよ⋯⋯♪
私の指は流れるようなあたたかいメロディを奏でだし、秘めていた感情がそのあたたかなメロディにとけてくように、声になって歌になって紡ぎだされていく。
歌い終えると額に浮かんだ汗をぬぐう。
「すげえ⋯⋯」
その声に顔をあげれば風雅がいる。
「流石人魚のーじゃなねえ!」
と慌てたようにブンブンと手をふる風雅。
「でも⋯⋯まじですごいと思う。姉ちゃん、だれ想って歌ってんの?」
そうたずねられ思わず視線をはずす。
「いや、それは企業秘密だけど⋯⋯」
風雅は笑って「どーせ、ナギだろ」といってくる。
何故かその言葉に胸の奥がズキリといたんだ。
でも、私はそれを、ごまかすように笑って
「へっへ〜ん。まったく違う人でーす」
そう、いった⋯⋯。