初恋の人は人魚×アイドル!?
「なんで桃ちゃんがそこに⋯?⋯⋯」
「私、ナギの幼なじみなんですよ。いてもおかしくないと思いますけど」
そういう桃ちゃんの笑顔にはなんというか感情が感じられない。
怖い。逃げたい。そんな気持ちが胸を占めてくる。
「少し、失礼しますね」
「え?⋯⋯っ!!」
なにを?そうたずねようとした瞬間胸に激痛がはしる。れん兄の歌を聞いてからずっと私を悩ませていたあの痛みと同じ痛みが⋯⋯。
桃ちゃんが口ずさむ嫌な音調の曲に耳をふさぎたくなる。けど胸が痛くてそれどころではない。
「⋯⋯っ!」
くる⋯⋯しい⋯⋯。
一瞬あたりを強い光がつつみ⋯⋯。
私の心はつきものがとれたように空っぽになった。
「ふふ。やっと。やーっと手に入れました。」
満足げな桃ちゃんの声。
私がみていた桃ちゃんはつくりものの彼女であったことを察する。
私の横をスタスタと通り過ぎていく桃ちゃん。
なんで⋯⋯苦しいとも悲しいとも思えない。心がないみたい。
ルンルンした様子で去っていった桃ちゃん。
その手の中で何かが七色に光ったーー。
〜モモ〜
「あっ、モモだ〜。こんなところでどうしたの?」
「ソラ⋯⋯」
私はそっと貝をかくす。この七色の貝をソラには見せてはいけないと女の感がいってる。
私の感は大抵当たるのだけど⋯⋯。
ソラがあの女を好き?⋯⋯そんなのありえないわよね。ソラがいくら天然ボケしていても。
「ソラ、何も変わってないわね」
「え〜、そうかなあ」
爽やかな笑みでこちらをみつめる幼なじみは相変わらず。フワフワした雰囲気はかわらない。
あの女やフウくんに見せていたのは素の私じゃない。ソラを手本に演じたフワフワした女の子らしい女の子。
実際の私はあんなじゃない。
「これからナギと花火をみるの」
「えっ、そうなの?じゃあ、そのために来たってこと?」
「そうね⋯⋯。さっき家にいったのだけれどいなかったの。どこにいるか知らない?」
「んー。今の時間は仕事はいってないだろうからどっかに遊びにいってるんじゃないかな」
そういうソラに「そう。ありがとう」
といって早々に去ろうとするが久々に再会したということもあって少し質問をしてみる。
「あんたはあのお⋯⋯莉音先輩のことどう思ってるの?」
あの女、といいかけて慌てて莉音先輩という私。ソラはいぶがしげな表情をすることもなく、これ以上ないほどの笑顔で
「僕は莉音が好きだよ」
という。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
「はあっ!?あんた、それ本気なの?」
「うん」
そういう天然幼なじみからはお花がとんでる。まともに話したって無駄なのはよく承知しているがそれにしたって⋯⋯。
ナギもソラもどうかしてる。あんな女のどこがいいのよ⋯⋯。
「今日の花火大会、莉音と一緒にいくんだ。それでこの想いをちゃんと伝えたらな、って⋯⋯」
そういうソラの顔は随分と大人びている。見ない間に成長したのね⋯⋯。
「莉音先輩ならナギの家のあたりにいたわ。」
「ほんとっ!?教えてくれてありがとう、モモ」
そういって微笑むソラ。
これでも一応幼なじみだ。相手はどうあれ、応援してあげたい気持ちがある。
私は「じゃあ、またね」というとソラに背を向け歩き出した。
「モモ〜、ま〜た〜ね〜」
そんなソラの声を聞きながら、私は七色の貝をそっとポケットにしまった。
「ううっ⋯⋯」
ギュッと胸元をおさえる。
自分の中で日に日にヤツが大きくなってきているのがわかる。
ヤツをおさえる薬をもらうためとはいえ、好きな人を傷つけるような真似はもうしたくない。
あの男の好きにはさせない⋯⋯!
ふと見上げた空は青く、太陽の光がまぶしい。
そんな太陽の光を反射しながら穏やかな満ち干きを繰り返す海。
溺れていた莉音を助けてこの入江に助けあげた日を思い出す。
あの日僕は一度も話したことがない名前も知らない女の子に恋に落ちた。
「僕⋯⋯馬鹿だなあ⋯⋯」
この恋が叶う可能性なんてこれっぽっちもなかったのに。諦めがつかないからって皆を傷つけてここにいる。
でもそれでも⋯⋯!
「ナ⋯⋯ギ?なんで泣いてるの!?」
懐かしい声に顔をあげると入江の上の崖からこちらをみつめるひとりの少女。
その大きなスカイブルーの瞳は不安げに揺れている。
「今いくっ!」
「なんでモモ⋯⋯」
どうしてここにいるのかは分からないがなんにせよここには⋯⋯
何故だかモモにこの場所に来て欲しくなくて僕は重い足取りで自らモモの元に向かった。
「ナギっ!会いたかった!」
そういって抱きついてくるモモ。
甘ったるい匂いが漂い無意識に顔をしかめてしまう。
「僕は別に会いたくなかったけどね⋯⋯」
とボソッとつぶやく。
「ひ、ひどい!ナギの意地悪!」
「⋯⋯それより、なんでモモがここに?海を追放されてる僕達はわかるけど、モモは⋯⋯」
「ナギに会いたくてきたの。それだけじゃだめ?」
そういって上目遣いにこちらをみてくる。可愛いと思う。
けど、好きだとは思わない。
「一緒に⋯⋯花火大会いこ」
「無理」
「なんでよっ!?」
そういってプクーッとふくれるモモ。
「花火大会一緒にいこうって約束してる子がいる。だから無理。」
そういう僕の頬は自然とゆるんでいく。もしかしなくてもにやけてしまってるかも。
莉音と花火をみる。そのことを考えるとこの面倒くさい幼なじみの相手も苦じゃない。
「ぶー。冷たいナギ。じゃ、いーよ。うち帰る」
「ああ、かえれかえれ」
そう、冷たくいう。でないとこの幼なじみは諦めてくれないから。
なのにモモは全然気にしていないようだ。
「それまで⋯⋯一緒にいてね」
そういって微笑むモモの笑みは本当に幸せそうだった。
「私、ナギの幼なじみなんですよ。いてもおかしくないと思いますけど」
そういう桃ちゃんの笑顔にはなんというか感情が感じられない。
怖い。逃げたい。そんな気持ちが胸を占めてくる。
「少し、失礼しますね」
「え?⋯⋯っ!!」
なにを?そうたずねようとした瞬間胸に激痛がはしる。れん兄の歌を聞いてからずっと私を悩ませていたあの痛みと同じ痛みが⋯⋯。
桃ちゃんが口ずさむ嫌な音調の曲に耳をふさぎたくなる。けど胸が痛くてそれどころではない。
「⋯⋯っ!」
くる⋯⋯しい⋯⋯。
一瞬あたりを強い光がつつみ⋯⋯。
私の心はつきものがとれたように空っぽになった。
「ふふ。やっと。やーっと手に入れました。」
満足げな桃ちゃんの声。
私がみていた桃ちゃんはつくりものの彼女であったことを察する。
私の横をスタスタと通り過ぎていく桃ちゃん。
なんで⋯⋯苦しいとも悲しいとも思えない。心がないみたい。
ルンルンした様子で去っていった桃ちゃん。
その手の中で何かが七色に光ったーー。
〜モモ〜
「あっ、モモだ〜。こんなところでどうしたの?」
「ソラ⋯⋯」
私はそっと貝をかくす。この七色の貝をソラには見せてはいけないと女の感がいってる。
私の感は大抵当たるのだけど⋯⋯。
ソラがあの女を好き?⋯⋯そんなのありえないわよね。ソラがいくら天然ボケしていても。
「ソラ、何も変わってないわね」
「え〜、そうかなあ」
爽やかな笑みでこちらをみつめる幼なじみは相変わらず。フワフワした雰囲気はかわらない。
あの女やフウくんに見せていたのは素の私じゃない。ソラを手本に演じたフワフワした女の子らしい女の子。
実際の私はあんなじゃない。
「これからナギと花火をみるの」
「えっ、そうなの?じゃあ、そのために来たってこと?」
「そうね⋯⋯。さっき家にいったのだけれどいなかったの。どこにいるか知らない?」
「んー。今の時間は仕事はいってないだろうからどっかに遊びにいってるんじゃないかな」
そういうソラに「そう。ありがとう」
といって早々に去ろうとするが久々に再会したということもあって少し質問をしてみる。
「あんたはあのお⋯⋯莉音先輩のことどう思ってるの?」
あの女、といいかけて慌てて莉音先輩という私。ソラはいぶがしげな表情をすることもなく、これ以上ないほどの笑顔で
「僕は莉音が好きだよ」
という。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
「はあっ!?あんた、それ本気なの?」
「うん」
そういう天然幼なじみからはお花がとんでる。まともに話したって無駄なのはよく承知しているがそれにしたって⋯⋯。
ナギもソラもどうかしてる。あんな女のどこがいいのよ⋯⋯。
「今日の花火大会、莉音と一緒にいくんだ。それでこの想いをちゃんと伝えたらな、って⋯⋯」
そういうソラの顔は随分と大人びている。見ない間に成長したのね⋯⋯。
「莉音先輩ならナギの家のあたりにいたわ。」
「ほんとっ!?教えてくれてありがとう、モモ」
そういって微笑むソラ。
これでも一応幼なじみだ。相手はどうあれ、応援してあげたい気持ちがある。
私は「じゃあ、またね」というとソラに背を向け歩き出した。
「モモ〜、ま〜た〜ね〜」
そんなソラの声を聞きながら、私は七色の貝をそっとポケットにしまった。
「ううっ⋯⋯」
ギュッと胸元をおさえる。
自分の中で日に日にヤツが大きくなってきているのがわかる。
ヤツをおさえる薬をもらうためとはいえ、好きな人を傷つけるような真似はもうしたくない。
あの男の好きにはさせない⋯⋯!
ふと見上げた空は青く、太陽の光がまぶしい。
そんな太陽の光を反射しながら穏やかな満ち干きを繰り返す海。
溺れていた莉音を助けてこの入江に助けあげた日を思い出す。
あの日僕は一度も話したことがない名前も知らない女の子に恋に落ちた。
「僕⋯⋯馬鹿だなあ⋯⋯」
この恋が叶う可能性なんてこれっぽっちもなかったのに。諦めがつかないからって皆を傷つけてここにいる。
でもそれでも⋯⋯!
「ナ⋯⋯ギ?なんで泣いてるの!?」
懐かしい声に顔をあげると入江の上の崖からこちらをみつめるひとりの少女。
その大きなスカイブルーの瞳は不安げに揺れている。
「今いくっ!」
「なんでモモ⋯⋯」
どうしてここにいるのかは分からないがなんにせよここには⋯⋯
何故だかモモにこの場所に来て欲しくなくて僕は重い足取りで自らモモの元に向かった。
「ナギっ!会いたかった!」
そういって抱きついてくるモモ。
甘ったるい匂いが漂い無意識に顔をしかめてしまう。
「僕は別に会いたくなかったけどね⋯⋯」
とボソッとつぶやく。
「ひ、ひどい!ナギの意地悪!」
「⋯⋯それより、なんでモモがここに?海を追放されてる僕達はわかるけど、モモは⋯⋯」
「ナギに会いたくてきたの。それだけじゃだめ?」
そういって上目遣いにこちらをみてくる。可愛いと思う。
けど、好きだとは思わない。
「一緒に⋯⋯花火大会いこ」
「無理」
「なんでよっ!?」
そういってプクーッとふくれるモモ。
「花火大会一緒にいこうって約束してる子がいる。だから無理。」
そういう僕の頬は自然とゆるんでいく。もしかしなくてもにやけてしまってるかも。
莉音と花火をみる。そのことを考えるとこの面倒くさい幼なじみの相手も苦じゃない。
「ぶー。冷たいナギ。じゃ、いーよ。うち帰る」
「ああ、かえれかえれ」
そう、冷たくいう。でないとこの幼なじみは諦めてくれないから。
なのにモモは全然気にしていないようだ。
「それまで⋯⋯一緒にいてね」
そういって微笑むモモの笑みは本当に幸せそうだった。