初恋の人は人魚×アイドル!?
私には、彼にかける言葉がわからない。
シスコンとしか言いようがない程姉を慕っていた彼にこれほど辛い現実はないだろう。
「もう、海に帰ったよ」
「そっか」
キールくんは意外にもあっさりとその事実を受け入れた。
「地上でモデルとかやられて変な虫がたかるよりマシだよ。よかった」
そういうキールくんの口調からは安堵のため息が聞こえてくるようだ。
「そっか」
てっきり泣きわめいて「お姉ちゃん、お姉ちゃ〜ん」などというと思っていたのに。
「意外だね」
「なにがだよっ!!」
そういってキッとこちらを睨みつけたキールくんのグレーブルーの瞳には見る見るうちに涙が溜まっていく。
「えっと⋯⋯」
なにも意外じゃなかったんですけど⋯⋯。
「もういいっ!僕帰る!」
そういうキールくんは必死に涙を拭っても追いつかないくらいボロボロと涙をこぼしている。
去っていくキールくんの背中を見つめながらふとあることに思いあたる。
よく考えもせず口をついてでる言葉。
「キールくんって一人暮しなの?」
「はっ?」
振り返ったキール君はすごく柄が悪い。しかし涙でぐしゃぐしゃの顔なのでさして迫力はない。
「いきなり何いいだすの、お前」
確かにいきなりすぎだよね。でもそれ以上に言いづらい⋯⋯よね。
キール君はモモちゃんと同じ、ツンツンデレだから。
「うちくる?」
私は某番組のタイトルを少しわざとらしく言ってみた。
「⋯⋯は?」
尚もしかめっ面をするキール君。
「だから、キール君ってモモちゃんと暮らしてたんでしょ?」
「は〜⋯⋯」
私の言葉を聞いてわざとらしくため息をつき呆れた仕草をするキール君。
「姉弟だからって皆同じ家に住むと思うなよ」
どこか皮肉ともとれる物言い。
「僕はスズ⋯⋯ユータの姉の家に住んでるの。第一お姉ちゃんがこっちに来たのはつい最近なんだから、お前の考えだとそれまで僕が一人暮らししてることになるだろ。小学生が一人暮らし出来るはずないんだからさ。ここ、使いなよ」
そういって人差し指で頭をトントンするキール君。
「あ、ああ。あはは。ごめんね、勘違いして」
なんていって苦笑する。
今といいさっきのSUNNY'Sを強盗犯と勘違いしたことといい⋯⋯。
恥ずかしくて下を向いていると予想外の言葉が耳に飛び込んてくる。
「まあ、面白そうだし行ってみようかな」
「え?⋯⋯」
「だから、面白そうだから行ってみるっていってるの。スズにいつまでも頼ってるのも申し訳ないしね」
キール君みたいなひねくれた子が「申し訳ない」って思ったりするんだ。
スズさんって一体⋯⋯。
「お前から言い出したことだし、勿論いいよね?」
そういうとキール君はこと無邪気な顔で笑む。何かを企んでいるような邪悪な笑みを浮かべられるよりずっと怖い。
私はにこりと微笑み(上手く微笑めず歪んだ笑みになっているかも)
「もちろん⋯⋯」
そう、いった。
「うわっ、なにこれ。冷蔵庫の中なにもないんだけど」
「あー⋯⋯ちょっ、勝手に⋯⋯」
私の両手にはキール君の生活用品が詰め込まれた重いカバン。
そして持ち主であるキール君は家に入った途端、姑のように家の全てに文句をつけ始めた。
「あの、キール君、とりあえず荷物は私の部屋」
「はあっ!?」
キール君がすごい勢いで振り返ったせいで荷物を落としそうになってしまう。
「なっ、なに?」
「お前、バカなの?なんで僕がお前と同じ部屋なんだよ」
あ⋯⋯。そうだよね。キール君も子供といえど思春期真っ只中なんだもんね。
「大丈夫、風雅もいるから」
「そういう意味じゃないよっ!」
「はあ⋯⋯。何がいいたいの? 」
「ぼっ⋯⋯僕は⋯⋯まだ⋯⋯誰とも一緒の部屋で寝たことないんだ」
そういうキール君の顔は真っ赤っか。
「?そうなんだ」
「なっ、なに、平気そうにしてるんだよ!僕だって一応思春期だしお前だって⋯⋯」
しゃべるたびに真っ赤になっていくキール君。
何がいいたいのか全くわからない。
「とっ、とにかく、一緒の」
「もう、キール君は恥ずかしがり屋さんだなあ。大丈夫だよ、お姉さん年上派だから。キール君に変なことはしません」
そういって微笑んでみせるキール君はこちらをゴミでも見るような目つきで人睨みすると
「わかったけど⋯⋯。その証明にも一緒のベッドは嫌だから」
という。
「⋯⋯⋯⋯」
?一緒のベッドとは⋯⋯?
「えっ、どゆこと?」
「はあっ!?お前、知らないの?男と女が一つの同じ部屋ってことは同じベッドってことなんだぞ!?」
「え⋯⋯」
今すごいこといったな、この子。
「それ、誰から聞いたの?」
「⋯⋯お姉ちゃん。よく『ナギの部屋に行きたい』って言ってたし⋯⋯。僕にその⋯⋯計画について話してくれたんだ」
「キール君待とう!?その計画を常識にしてはいけないよ!?」
「はあ?」
そういって怪訝な顔をするキール君。
「えっと⋯⋯とりあえず、キール君と私は別々のベッドだからね」
そういう私は少し赤いかもしれない。
キール君の荷物を置き、テレビをつける。
「あっ、れん兄!」
そこに映っていたのは私の恋人であり幼なじみでもある人、れん兄。
「今日もかっこいい⋯⋯」
「なにテレビに話しかけてんのさ」
「べ、別にそういうわけじゃないよ~」
そういいつつ頬が緩んでいくのがわかる。
対戦型クイズバラエティ、ザ・クエスチョン。
昨日番組表を見ている時「HRN参戦」の文字をみて即行で予約したんだっけ⋯⋯。
にしても今日も今日とてれん兄かっこよすぎる。
そんなことを思いながらふわふわした気分でテレビをながめる。
「この人⋯⋯」
ふと目に留まったのはHRNとは違うチームの女の人。
どこかで見たことある気がするな⋯⋯なんて人だっけ?
サラサラの黒髪セミロングにくりくりしたルビー色の瞳。肌は白く華奢ですごく女の子らしい。
⋯⋯誰かに似てるような⋯⋯?
「知らないの?ユータの姉ちゃん。女優なんだよ」
そういうキール君はソファに座りアイスを頬張っている。それ私のなのに⋯⋯と内心嘆きつつ「ケチ」と言われるのは嫌なので黙っておく。
そしてなにより⋯⋯
「ユータのお姉ちゃんって芸能人だったの!?」
普段ドラマなどめったに見ないので全く知らなかった。それにユータ自身にもさして興味がなかったし⋯⋯
「まあ、こいつ、めったにバラエティ出たりしないし知らなくても仕方ないんじゃない。ドラマも出てるは出てるけど基本的に舞台とか好んでやってるからね」
「そ、そうなんだ⋯⋯。で、この人がキール君が一緒に暮らしてた人?⋯⋯」
「まあね。」
「はあ⋯⋯」
それにしても可愛いらしい人だな。小動物みたい。テレビの画面を眺めながらさっきとは打って違いスズさんを一心にながめる私。
「ユータとは似ても似つかない綺麗な人だよね⋯⋯」
どこかうっとりとした口調でそういうキール君に驚く。モモちゃん以外の女の人を「綺麗」っていうんだ⋯⋯。
そのことに驚いていた私は気づかなかった。
キール君が心底呆れた顔で「普通にしてれば、ね」といったことに⋯⋯。
番組が終わると立ち上がり台所に向かう。
風雅が帰って来る前に夜ご飯作っとかなきゃ。
プルルル
そこで携帯がなって慌ててリビングに戻る。
テーブルに置いといた携帯を開きメールの受信画面をみる。
その送り主の名を見て一瞬でも心が弾む。
〈今からSUNNY'SとHRNのメンバーで『汗もしたたるいい男』っていう鍋屋に行くんだ。良かったら莉音も来ない?あと、僕が君に伝えたのは連斗さんが携帯を家に置きわす〉
「あっ」
ナギらしい文面に一人微笑んでいるとキール君に携帯を横取りされる。
文面を読むほどに険しくなるキール君の表情。
「なにこれ⋯⋯。変な言い訳すぎて気持ち悪い⋯⋯。っていうか、この鍋屋すごい有名なところじゃん」
「えっ。そうなの?そんな変な名前なのに?」
「そうなの。名前とか関係ないんだよ。」
「はあ⋯⋯」
「いこう」
「えっ?」
「だから、行こうっていってるの」
そういうとキール君は口元に邪悪な笑みを浮かべた。
シスコンとしか言いようがない程姉を慕っていた彼にこれほど辛い現実はないだろう。
「もう、海に帰ったよ」
「そっか」
キールくんは意外にもあっさりとその事実を受け入れた。
「地上でモデルとかやられて変な虫がたかるよりマシだよ。よかった」
そういうキールくんの口調からは安堵のため息が聞こえてくるようだ。
「そっか」
てっきり泣きわめいて「お姉ちゃん、お姉ちゃ〜ん」などというと思っていたのに。
「意外だね」
「なにがだよっ!!」
そういってキッとこちらを睨みつけたキールくんのグレーブルーの瞳には見る見るうちに涙が溜まっていく。
「えっと⋯⋯」
なにも意外じゃなかったんですけど⋯⋯。
「もういいっ!僕帰る!」
そういうキールくんは必死に涙を拭っても追いつかないくらいボロボロと涙をこぼしている。
去っていくキールくんの背中を見つめながらふとあることに思いあたる。
よく考えもせず口をついてでる言葉。
「キールくんって一人暮しなの?」
「はっ?」
振り返ったキール君はすごく柄が悪い。しかし涙でぐしゃぐしゃの顔なのでさして迫力はない。
「いきなり何いいだすの、お前」
確かにいきなりすぎだよね。でもそれ以上に言いづらい⋯⋯よね。
キール君はモモちゃんと同じ、ツンツンデレだから。
「うちくる?」
私は某番組のタイトルを少しわざとらしく言ってみた。
「⋯⋯は?」
尚もしかめっ面をするキール君。
「だから、キール君ってモモちゃんと暮らしてたんでしょ?」
「は〜⋯⋯」
私の言葉を聞いてわざとらしくため息をつき呆れた仕草をするキール君。
「姉弟だからって皆同じ家に住むと思うなよ」
どこか皮肉ともとれる物言い。
「僕はスズ⋯⋯ユータの姉の家に住んでるの。第一お姉ちゃんがこっちに来たのはつい最近なんだから、お前の考えだとそれまで僕が一人暮らししてることになるだろ。小学生が一人暮らし出来るはずないんだからさ。ここ、使いなよ」
そういって人差し指で頭をトントンするキール君。
「あ、ああ。あはは。ごめんね、勘違いして」
なんていって苦笑する。
今といいさっきのSUNNY'Sを強盗犯と勘違いしたことといい⋯⋯。
恥ずかしくて下を向いていると予想外の言葉が耳に飛び込んてくる。
「まあ、面白そうだし行ってみようかな」
「え?⋯⋯」
「だから、面白そうだから行ってみるっていってるの。スズにいつまでも頼ってるのも申し訳ないしね」
キール君みたいなひねくれた子が「申し訳ない」って思ったりするんだ。
スズさんって一体⋯⋯。
「お前から言い出したことだし、勿論いいよね?」
そういうとキール君はこと無邪気な顔で笑む。何かを企んでいるような邪悪な笑みを浮かべられるよりずっと怖い。
私はにこりと微笑み(上手く微笑めず歪んだ笑みになっているかも)
「もちろん⋯⋯」
そう、いった。
「うわっ、なにこれ。冷蔵庫の中なにもないんだけど」
「あー⋯⋯ちょっ、勝手に⋯⋯」
私の両手にはキール君の生活用品が詰め込まれた重いカバン。
そして持ち主であるキール君は家に入った途端、姑のように家の全てに文句をつけ始めた。
「あの、キール君、とりあえず荷物は私の部屋」
「はあっ!?」
キール君がすごい勢いで振り返ったせいで荷物を落としそうになってしまう。
「なっ、なに?」
「お前、バカなの?なんで僕がお前と同じ部屋なんだよ」
あ⋯⋯。そうだよね。キール君も子供といえど思春期真っ只中なんだもんね。
「大丈夫、風雅もいるから」
「そういう意味じゃないよっ!」
「はあ⋯⋯。何がいいたいの? 」
「ぼっ⋯⋯僕は⋯⋯まだ⋯⋯誰とも一緒の部屋で寝たことないんだ」
そういうキール君の顔は真っ赤っか。
「?そうなんだ」
「なっ、なに、平気そうにしてるんだよ!僕だって一応思春期だしお前だって⋯⋯」
しゃべるたびに真っ赤になっていくキール君。
何がいいたいのか全くわからない。
「とっ、とにかく、一緒の」
「もう、キール君は恥ずかしがり屋さんだなあ。大丈夫だよ、お姉さん年上派だから。キール君に変なことはしません」
そういって微笑んでみせるキール君はこちらをゴミでも見るような目つきで人睨みすると
「わかったけど⋯⋯。その証明にも一緒のベッドは嫌だから」
という。
「⋯⋯⋯⋯」
?一緒のベッドとは⋯⋯?
「えっ、どゆこと?」
「はあっ!?お前、知らないの?男と女が一つの同じ部屋ってことは同じベッドってことなんだぞ!?」
「え⋯⋯」
今すごいこといったな、この子。
「それ、誰から聞いたの?」
「⋯⋯お姉ちゃん。よく『ナギの部屋に行きたい』って言ってたし⋯⋯。僕にその⋯⋯計画について話してくれたんだ」
「キール君待とう!?その計画を常識にしてはいけないよ!?」
「はあ?」
そういって怪訝な顔をするキール君。
「えっと⋯⋯とりあえず、キール君と私は別々のベッドだからね」
そういう私は少し赤いかもしれない。
キール君の荷物を置き、テレビをつける。
「あっ、れん兄!」
そこに映っていたのは私の恋人であり幼なじみでもある人、れん兄。
「今日もかっこいい⋯⋯」
「なにテレビに話しかけてんのさ」
「べ、別にそういうわけじゃないよ~」
そういいつつ頬が緩んでいくのがわかる。
対戦型クイズバラエティ、ザ・クエスチョン。
昨日番組表を見ている時「HRN参戦」の文字をみて即行で予約したんだっけ⋯⋯。
にしても今日も今日とてれん兄かっこよすぎる。
そんなことを思いながらふわふわした気分でテレビをながめる。
「この人⋯⋯」
ふと目に留まったのはHRNとは違うチームの女の人。
どこかで見たことある気がするな⋯⋯なんて人だっけ?
サラサラの黒髪セミロングにくりくりしたルビー色の瞳。肌は白く華奢ですごく女の子らしい。
⋯⋯誰かに似てるような⋯⋯?
「知らないの?ユータの姉ちゃん。女優なんだよ」
そういうキール君はソファに座りアイスを頬張っている。それ私のなのに⋯⋯と内心嘆きつつ「ケチ」と言われるのは嫌なので黙っておく。
そしてなにより⋯⋯
「ユータのお姉ちゃんって芸能人だったの!?」
普段ドラマなどめったに見ないので全く知らなかった。それにユータ自身にもさして興味がなかったし⋯⋯
「まあ、こいつ、めったにバラエティ出たりしないし知らなくても仕方ないんじゃない。ドラマも出てるは出てるけど基本的に舞台とか好んでやってるからね」
「そ、そうなんだ⋯⋯。で、この人がキール君が一緒に暮らしてた人?⋯⋯」
「まあね。」
「はあ⋯⋯」
それにしても可愛いらしい人だな。小動物みたい。テレビの画面を眺めながらさっきとは打って違いスズさんを一心にながめる私。
「ユータとは似ても似つかない綺麗な人だよね⋯⋯」
どこかうっとりとした口調でそういうキール君に驚く。モモちゃん以外の女の人を「綺麗」っていうんだ⋯⋯。
そのことに驚いていた私は気づかなかった。
キール君が心底呆れた顔で「普通にしてれば、ね」といったことに⋯⋯。
番組が終わると立ち上がり台所に向かう。
風雅が帰って来る前に夜ご飯作っとかなきゃ。
プルルル
そこで携帯がなって慌ててリビングに戻る。
テーブルに置いといた携帯を開きメールの受信画面をみる。
その送り主の名を見て一瞬でも心が弾む。
〈今からSUNNY'SとHRNのメンバーで『汗もしたたるいい男』っていう鍋屋に行くんだ。良かったら莉音も来ない?あと、僕が君に伝えたのは連斗さんが携帯を家に置きわす〉
「あっ」
ナギらしい文面に一人微笑んでいるとキール君に携帯を横取りされる。
文面を読むほどに険しくなるキール君の表情。
「なにこれ⋯⋯。変な言い訳すぎて気持ち悪い⋯⋯。っていうか、この鍋屋すごい有名なところじゃん」
「えっ。そうなの?そんな変な名前なのに?」
「そうなの。名前とか関係ないんだよ。」
「はあ⋯⋯」
「いこう」
「えっ?」
「だから、行こうっていってるの」
そういうとキール君は口元に邪悪な笑みを浮かべた。