初恋の人は人魚×アイドル!?
れん兄と別れると私はなんだかモヤモヤした気持ちで家に向かう。
なんでだろう。
ただの何気ない言葉のはずなのに別れの言葉に聞こえた。
それが気になって仕方ない。
そんなことでいっぱいの頭で、鍵を開けるのもわすれドアノブを回す私。
けれどドアノブはすんなりと周り、扉が開く。
「鍵あいてるの?……」
なんでだろう。普段なら誰もいないんだけれど。
風雅早帰りだったのかな。
なんて思いながら玄関に上がれば見慣れない赤いヒールが目に入る。
「えっ?……」
あいつ……
彼女できたのーーっ?!
脳内はもうパニック状態でそんなことを考え出す。
あの美人さんで一癖あるモモちゃんとも付き合ってたわけだから、風雅って案外モテるのか?
全然そんなイメージないしあったとしても認めたくないけれど……。
けれど、このヒール、見た感じ、二十代のおしゃれなお姉さんを連想させるんだよねえ。
まさか年上なのかなあ。
なんて色々妄想しながら家に上がる。
ただいま、そう言おうとした時居間の方から
「うわあぁぁんっ!」
という悲鳴が聞こえてくる。
な、なに、一体何事?
そう思って私は慌てて居間へ駆けつける。
するとそこには……。
「えっと、スズさん……ですか?」
思わず呆然とする。
え?スズさんが風雅の?そんなまさか
スズさんは私の方を見やるとソファからスッと立ち上がり真剣な瞳でこちらへ歩いてくる。
「ど、どうしました?」
なにか危機的なものを感じて身構える私など他所に真剣な表情を崩すことなく顔と顔があと数センチというほどの至近距離にまで歩み寄ってくるスズさん。
間近で見ると改めて美人な人だと思う。
大きいクリクリした瞳とかサラサラしたいい匂いの髪の毛とか同性でも十分すぎるくらいキュンキュンさせられるんだからここに立ってるのが男の人だったらイチコロなんだろうなあ。
「莉音ちゃん」
「は、はい」
不意に名前を呼ばれ肩をガシリと掴まれた。
「私……信じてたんだ」
よく見てみればスズさんの瞳には薄っすらと涙がたまっている。
じゃあ、さっきの悲鳴は泣いていたから?
「平原はいつしか見上げるほどの山へ変化するって」
「はあ……」
「なのにもう、地平線が見える始末なんだよっ?!」
髪を振り乱してそう叫ぶスズさん。
「えっと、なんのことです?あと、なんでうちに?……」
戸惑いつつもそうたずねるとスズさんはバッと顔をあげた。
「これは私の胸の話だよ!!あと、お家はね、遊びに来たら空いてたから!」
「え……と」
さっきのは胸の話で、家にいたのは空いてたから?
う……なんだろう。
ソラとはまちがった天然属性を感じる。
ソラはホワホワしてるけれど、スズさんは天然が暴走しかかっている感じだ。
「あの、その話、ですけど、別に今のままでいいんじゃないですか?」
胸の話と口に出すのも恥ずかしくてゴホゴホと咳払いしつつそういう私にスズさんは
「よくないのっ!」
といってまた泣き出してしまう。
私はどうすればよいのかわからず躊躇いながらもスズさんの方をトントンと優しく叩いてみる。
まるで大きな子供みたいだ。
「カイラさんのタイプは胸のでかい人なんだもん!!」
「ええと……カイラさん……ですか?」
日本人ではあまり聞かない名だけどハーフなのかな?それとも外人?
スズさんのことだからどちらもあり得そうだけど。
「私の最愛の人なの。もう不動の嫁キャラなの」
キャラという言葉を聞いて途端ピンとくる私。
そうだ。スズさんはアニメが好きなんだから、それもアニメのキャラクターなのかもしれない。
実際カイラという名もアニメのキャラクターといわれればすんなりと理解できる。
「その子の好きなタイプがね、絶対胸でかくなきゃやだって……」
「そ、そうなんですか……」
それにしたってなんでそのことをうちで嘆いているのか。
けれどそれについては深く考えない方がいいだろう。
ソラと関わることで学んだ。
天然の行動になにを突っ込んだところで無駄なのだ、と。
きっと彼らは気の向くままに生活しているから特になにか理由があるとかないんだろう。
「ただいま……ってうわ、スズいるの?」
そんな声にハッと玄関の方を向けば見るからに嫌そうな顔をして玄関の赤いヒールを見つめるキールくんの姿がある。
「おかえり、キールくん」
「キーくんっ!会いたかったよぉ〜っ!」
私の声と重なってそういったスズさんはもう涙も止まったみたいだ。
今は完全にキールくんのことしか見ていない。
「なんでいきなりお家でてっちゃったの?お手紙には簡易的なことしか書いてなかったし。私ほんとに寂しかったんだよ!」
そういってキールくんの頬に頬ずりするスズさん。
キールくんは目に見えて『うげえ』といっている。
けれどスズさんはそれを気にしていない。もしくは気づいていない。
きっとこれが二人の日常なのだろう。
なんだか反抗期の息子と母親みたい。
「スズにばかり頼ってるのも申し訳ないって思ってたんだよ。そしたらちょうどその時そいつが『うちに住まないか』っていいだしたから」
うんざりした様子ながらちゃんと事情を説明するところがやはりツンデレというか、なんというか。
「……そうなんだね……。でも、キーくん、私」
「いっとくけどもう帰らないよ」
「ええっ?!そんなあ……」
「ごめん。けど別にスズが嫌いになったとかそういうことじゃないんだ。全然」
「じゃあ、どういうことなの?」
「僕自身の問題ってこと。スズの家でも色々あったろ。最初の頃ーーSUNNY'Sの奴らも同居してた頃とか。僕はそういうのから決別したいから、さ」
「……わかった。でも必ず一週間に一回はうちに遊びに来ること!いいね?」
「はいはい、わかったから」
そううんざりした様子でいうキールくんだけど、なんだか嬉しそうだ。
そんなキールくんを見て私まで嬉しくなって来る。
「あ、そうだ、莉音ちゃん」
不意にこちらを振り返るスズさん。
「?はい」
「私遊びに来ただけじゃなかったや。大事なお話があるの」
「は、はあ」
「でもその前に少しだけお着替えしよっか」
スズさんがひどくにこやかにそういうものだから、私もつられてにこやかになってつい「はい」なんていってしまう。
ほんと、天然って怖い。
「この服、なんだか……」
「どうどう?いいでしょ、いいでしょ!」
そういってグーと親指をたてるスズさんだけど、全然グーじゃない。
まるでアニメの中のキャラクターのような色あざやかで特徴的な服を着せられた私は戸惑いながら服の裾をつまむ。
「じゃあ、お話しようか。そこのソファでいいかな?」
そういうスズさんに慌てて「はい」と返事をする。
ソファに座ると服の違和感が余計に増したようだった。
「さてと……。キーくんはどうする?これからは大人のお話だからお部屋にいってても大丈夫だよ」
スズさんにそういわれたキールくん(キールくんもまたなにかの衣装を着ている。)はなぜかこちらをチラリと見やってから
「別に……子供じゃないし」
という。
ふふ。子供じゃないし、だって。
それこそ子供の証みたいなものだよね。なんて心の中であたたかな笑みを浮かべていたら、私の隣にドカッと座り込むキールくん。
「お前もっとそっちいけよ。狭いし、あんまりお前とくっつきたくない」
「ひ、ひどっ。最初に座ったの私なのにっ?!」
「うるさい」
うう〜。なんなんだよ〜。
かくしてソファの端と端に私とキールくん。
そしてその前の椅子の一つにスズさんが座ることとなった。
「じゃあ、さっそく。莉音ちゃん。あの人が来たでしょう?」
あの人。その意味深ないいかたにすぐにピンと来た。
思わず黙り込む私。
「図星かな。これはまずいね……」
「あの人?」
そう呟いて小首を傾げるキールくんの横で私は、スズさんはアリーシャさんについてなにか知っているのだろうか。
という期待と、なぜそのことをスズさんが知っているのかという不安を抱えていた。
なんでだろう。
ただの何気ない言葉のはずなのに別れの言葉に聞こえた。
それが気になって仕方ない。
そんなことでいっぱいの頭で、鍵を開けるのもわすれドアノブを回す私。
けれどドアノブはすんなりと周り、扉が開く。
「鍵あいてるの?……」
なんでだろう。普段なら誰もいないんだけれど。
風雅早帰りだったのかな。
なんて思いながら玄関に上がれば見慣れない赤いヒールが目に入る。
「えっ?……」
あいつ……
彼女できたのーーっ?!
脳内はもうパニック状態でそんなことを考え出す。
あの美人さんで一癖あるモモちゃんとも付き合ってたわけだから、風雅って案外モテるのか?
全然そんなイメージないしあったとしても認めたくないけれど……。
けれど、このヒール、見た感じ、二十代のおしゃれなお姉さんを連想させるんだよねえ。
まさか年上なのかなあ。
なんて色々妄想しながら家に上がる。
ただいま、そう言おうとした時居間の方から
「うわあぁぁんっ!」
という悲鳴が聞こえてくる。
な、なに、一体何事?
そう思って私は慌てて居間へ駆けつける。
するとそこには……。
「えっと、スズさん……ですか?」
思わず呆然とする。
え?スズさんが風雅の?そんなまさか
スズさんは私の方を見やるとソファからスッと立ち上がり真剣な瞳でこちらへ歩いてくる。
「ど、どうしました?」
なにか危機的なものを感じて身構える私など他所に真剣な表情を崩すことなく顔と顔があと数センチというほどの至近距離にまで歩み寄ってくるスズさん。
間近で見ると改めて美人な人だと思う。
大きいクリクリした瞳とかサラサラしたいい匂いの髪の毛とか同性でも十分すぎるくらいキュンキュンさせられるんだからここに立ってるのが男の人だったらイチコロなんだろうなあ。
「莉音ちゃん」
「は、はい」
不意に名前を呼ばれ肩をガシリと掴まれた。
「私……信じてたんだ」
よく見てみればスズさんの瞳には薄っすらと涙がたまっている。
じゃあ、さっきの悲鳴は泣いていたから?
「平原はいつしか見上げるほどの山へ変化するって」
「はあ……」
「なのにもう、地平線が見える始末なんだよっ?!」
髪を振り乱してそう叫ぶスズさん。
「えっと、なんのことです?あと、なんでうちに?……」
戸惑いつつもそうたずねるとスズさんはバッと顔をあげた。
「これは私の胸の話だよ!!あと、お家はね、遊びに来たら空いてたから!」
「え……と」
さっきのは胸の話で、家にいたのは空いてたから?
う……なんだろう。
ソラとはまちがった天然属性を感じる。
ソラはホワホワしてるけれど、スズさんは天然が暴走しかかっている感じだ。
「あの、その話、ですけど、別に今のままでいいんじゃないですか?」
胸の話と口に出すのも恥ずかしくてゴホゴホと咳払いしつつそういう私にスズさんは
「よくないのっ!」
といってまた泣き出してしまう。
私はどうすればよいのかわからず躊躇いながらもスズさんの方をトントンと優しく叩いてみる。
まるで大きな子供みたいだ。
「カイラさんのタイプは胸のでかい人なんだもん!!」
「ええと……カイラさん……ですか?」
日本人ではあまり聞かない名だけどハーフなのかな?それとも外人?
スズさんのことだからどちらもあり得そうだけど。
「私の最愛の人なの。もう不動の嫁キャラなの」
キャラという言葉を聞いて途端ピンとくる私。
そうだ。スズさんはアニメが好きなんだから、それもアニメのキャラクターなのかもしれない。
実際カイラという名もアニメのキャラクターといわれればすんなりと理解できる。
「その子の好きなタイプがね、絶対胸でかくなきゃやだって……」
「そ、そうなんですか……」
それにしたってなんでそのことをうちで嘆いているのか。
けれどそれについては深く考えない方がいいだろう。
ソラと関わることで学んだ。
天然の行動になにを突っ込んだところで無駄なのだ、と。
きっと彼らは気の向くままに生活しているから特になにか理由があるとかないんだろう。
「ただいま……ってうわ、スズいるの?」
そんな声にハッと玄関の方を向けば見るからに嫌そうな顔をして玄関の赤いヒールを見つめるキールくんの姿がある。
「おかえり、キールくん」
「キーくんっ!会いたかったよぉ〜っ!」
私の声と重なってそういったスズさんはもう涙も止まったみたいだ。
今は完全にキールくんのことしか見ていない。
「なんでいきなりお家でてっちゃったの?お手紙には簡易的なことしか書いてなかったし。私ほんとに寂しかったんだよ!」
そういってキールくんの頬に頬ずりするスズさん。
キールくんは目に見えて『うげえ』といっている。
けれどスズさんはそれを気にしていない。もしくは気づいていない。
きっとこれが二人の日常なのだろう。
なんだか反抗期の息子と母親みたい。
「スズにばかり頼ってるのも申し訳ないって思ってたんだよ。そしたらちょうどその時そいつが『うちに住まないか』っていいだしたから」
うんざりした様子ながらちゃんと事情を説明するところがやはりツンデレというか、なんというか。
「……そうなんだね……。でも、キーくん、私」
「いっとくけどもう帰らないよ」
「ええっ?!そんなあ……」
「ごめん。けど別にスズが嫌いになったとかそういうことじゃないんだ。全然」
「じゃあ、どういうことなの?」
「僕自身の問題ってこと。スズの家でも色々あったろ。最初の頃ーーSUNNY'Sの奴らも同居してた頃とか。僕はそういうのから決別したいから、さ」
「……わかった。でも必ず一週間に一回はうちに遊びに来ること!いいね?」
「はいはい、わかったから」
そううんざりした様子でいうキールくんだけど、なんだか嬉しそうだ。
そんなキールくんを見て私まで嬉しくなって来る。
「あ、そうだ、莉音ちゃん」
不意にこちらを振り返るスズさん。
「?はい」
「私遊びに来ただけじゃなかったや。大事なお話があるの」
「は、はあ」
「でもその前に少しだけお着替えしよっか」
スズさんがひどくにこやかにそういうものだから、私もつられてにこやかになってつい「はい」なんていってしまう。
ほんと、天然って怖い。
「この服、なんだか……」
「どうどう?いいでしょ、いいでしょ!」
そういってグーと親指をたてるスズさんだけど、全然グーじゃない。
まるでアニメの中のキャラクターのような色あざやかで特徴的な服を着せられた私は戸惑いながら服の裾をつまむ。
「じゃあ、お話しようか。そこのソファでいいかな?」
そういうスズさんに慌てて「はい」と返事をする。
ソファに座ると服の違和感が余計に増したようだった。
「さてと……。キーくんはどうする?これからは大人のお話だからお部屋にいってても大丈夫だよ」
スズさんにそういわれたキールくん(キールくんもまたなにかの衣装を着ている。)はなぜかこちらをチラリと見やってから
「別に……子供じゃないし」
という。
ふふ。子供じゃないし、だって。
それこそ子供の証みたいなものだよね。なんて心の中であたたかな笑みを浮かべていたら、私の隣にドカッと座り込むキールくん。
「お前もっとそっちいけよ。狭いし、あんまりお前とくっつきたくない」
「ひ、ひどっ。最初に座ったの私なのにっ?!」
「うるさい」
うう〜。なんなんだよ〜。
かくしてソファの端と端に私とキールくん。
そしてその前の椅子の一つにスズさんが座ることとなった。
「じゃあ、さっそく。莉音ちゃん。あの人が来たでしょう?」
あの人。その意味深ないいかたにすぐにピンと来た。
思わず黙り込む私。
「図星かな。これはまずいね……」
「あの人?」
そう呟いて小首を傾げるキールくんの横で私は、スズさんはアリーシャさんについてなにか知っているのだろうか。
という期待と、なぜそのことをスズさんが知っているのかという不安を抱えていた。