溺愛オフィス
やっぱり、見られてた。
でも、聞かれても答えにくくて。
「手──」
私は急ぎ、壮介君の声に自分の声を被せる。
「私に用って何っ? カタログの?」
そうして、壮介君の用件を急かした。
壮介君は不服そうな顔をしたけど、追求をやめてくれて仕事の話をし始める。
とりあえずは助かったことに、ホッとして。
けれど、もう一度聞かれたらどう答えればいいのだろうと動揺しながら、壮介君の用件に耳を傾けていた。
桜庭さんの温もりが
まだ手に残っているような気がしながら──‥