溺愛オフィス
【巻き込まれたようです】
定時の鐘が鳴り、マグカップを満たしていた紅茶も無くなって。
まだ少し仕事が残っている私は、飲み物のお代わりがてら、お手洗いに行こうと席を立った。
廊下に出て、一つ目の角を曲がった先にお手洗いがある。
お手洗いへの扉は設置されておらず、入るとまずは洗面台が見え、右にはトイレ、左にはパウダールームがある。
ふと、パウダールームに人の気配を感じてトイレに入る前に視線をやると、そこにいるのは美咲で。
「美咲」
声をかけると、彼女はメイクを直していた手を止めて私を振り返った。
「柊奈も上がり?」
「ううん。私はまだ少し残るよ。美咲はデート?」
「うん。ドクター君とね」
答えて、美咲はまた鏡の中の自分と向かい合う。
秘書君とはどうなってるのか気になったけど、ここだと誰に聞かれるかんからないのでやめておいた。