溺愛オフィス
「……ううん、してないよ」
喧嘩なんてしてない、けど。
あの日から微妙な空気が私たちの間にあるのは明らかだった。
ちなみに、桜庭さんは特にいつもと変わりなく私と壮介君に接している。
私も出来る限り普通に接するよう心がけてはいるけど、もしかしたらぎこちないかもしれない。
桜庭さんに対しても、壮介君に対しても。
「そ? でも、なーんか新人君の柊奈に対する態度が怒ってるように見えるのよねー」
メイク直しが完了したのか、美咲はポーチに化粧品をしまいながら口にする。
……確かに、壮介君から怒りのオーラはひしひしと感じていた。
会社で何やってんだって、そう思ってるんだろう。
実際、自分でもそう思うし。
雰囲気にのまれて、会社で何しちゃったんだって。