溺愛オフィス

どうしてここで私を巻き込むんですかと文句を言いたいところではあるけど、私はそれをぐっと堪える。


「その、仕事の事で相談がありまして……」


せめて、変な勘違いをされないようにと仕事という単語を口にする。

けれど、KAORIさんは気に食わなかったようで。


「……仕事の相談、ね」


少し低い声で呟くと、組んでいた足を解いて立ち上がる。


「その相談、急ぎ？ 一陽じゃないとダメなの？」


日を改めろ、別の人に相談しろと言いたいんだろう。

詰め寄るように聞かれて、私は思わず別の人にしますと言ってしまいたくなる。

それくらいに、綺麗な人の不機嫌オーラには迫力があった。

けれど、上司を裏切るわけにもいかず。


「す、すみません」


KAORIさんに頭を下げて、桜庭さんの頼みを優先させる。


……だって、桜庭さんには恩があるから。


私を助けてくれた人を、今度は私が助ける。

助ける内容はちょっと自分都合でアレだけど。