溺愛オフィス
【意識なんてしていない、です】
オシャレな居酒屋のプライベート感漂うモダンな個室内で、クッションに囲まれながら座る私。
その向かいで、見た目も涼しいウイスキーミストを飲んでいるのは……
「旨いな」
美味しいお酒にちょっと満足気な桜庭さんだ。
モダンな部屋でウイスキーを飲む桜庭さんは、絵になるなぁ……
って、そうじゃなくて!
私は、グラスのふちにグレープフルーツが飾られたスプモーニを一口喉に流し込んでから、口を開く。
「あの、私を巻き込まないでください」
何を、とは言わなくても理解しているようで、桜庭さんはグラスを片手に僅かに首を傾げた。
「どうして?」
「どうしてって……KAORIさん、不機嫌そうでしたし」
私が桜庭さんをフォローした時のKAORIさんの瞳、声、態度。
どう思い出してみても、私への不満だらけだった。
これからの撮影のことを考えると、穏便にすませたいのに。
なのに、桜庭さんは。
「気にするな」
そう言って、またウイスキーを口にするだけ。