溺愛オフィス
「だから頼むぞ、蓮井」
「へ?」
いきなり何やら頼まれた私は、意味がわからずポカンと口を開けて桜庭さんを見れば。
「俺の貴重な過去を教えてやったんだ。これからも、俺の為に協力しろよ?」
「えっ? えぇっ!?」
協力って、一体何を!
またKAORIさんとのことに巻き込むつもりとか!?
慌てる私を見つめながら、クスクス笑う桜庭さん。
からかわれたのか、本気なのかはわからないけど……
オフィスにいたらあまり見られない彼の楽しそうな笑い顔に、トクントクンと高鳴る鼓動。
『好きな奴でもいるのか?』
桜庭さんに聞かれた質問が、私の頭を一瞬過って。
柔らかく目を細めて私を見つめる彼から視線を外すと、私は心の中で呟いた。
これは、そんなのじゃない。
意識なんて……
してない。