溺愛オフィス
「おばあちゃん! 久しぶり」
「ほんと、久しぶりだわぁ。来てくれてありがとうね」
皺を深めて嬉しそうに微笑むのは、連絡をくれた父の母。
祖母もお見舞いに来ていたらしく、私を父のいる病室まで案内してくれた。
最大六人が同室となる大部屋は満員のようで、全てのカーテンが閉まっている。
祖母は、病室に入ってすぐ、左手前のクリーム色のカーテンに手を掛けると「入るよ」と声をかけた。
すると「ん」とだけ聞こえてきた男の人の太く低い声。
どこか機嫌の悪そうなその声に、私の心臓が緊張で締め付けられる感じして。
無意識に、胸元で拳を握ってしまう。
「柊奈ちゃんがお見舞いに来てくれたよ」
祖母は言いながら、背後に立つ私の背に手を添え、ベッドに横になっている父の前に押し出した。