溺愛オフィス
十年振りに見た父は、記憶に残る父よりも白髪が増えていて。
やはりまだ体調が良くないのか、少し顔色が悪い。
父は私の姿を視界におさめた瞬間、僅かに目を見開いた。
けれど、すぐに視線を外すと眉間に皺を寄せ──
「来て欲しいなんて誰が言った」
冷たい言葉を吐き出した。
悲しさなのか。
怒りなのか。
それとも、ここに来たことへの後悔なのか。
父にと選んだ花を持つ手が小さく震える。
父の私に対する態度は、最後に会った時から時を経ても……
何も変わってなかった。