溺愛オフィス


変わらない。

何もかも、あの頃のまま。


病院を出ると、頭上には曇天。

その下を、重い足を引きずるように歩いて……


どのくらいの距離を、どのくらいの時間をかけて歩いていたのか。


途中、小さな公園を見つけた私は、中に入ると木のベンチに腰を下ろした。

肩にかけていたレトロ調のプリントバッグを膝の上に置いて、背を丸め、瞼を閉じる。

すると、脳裏に浮かんだのは、不機嫌そうな父の顔。


期待、してたのかもしれない。

会わなくなって長い時間が経ってる。

だから、お父さんの態度が柔らかくなってるかもしれないって。

変わらないものもあるけど、変わるものもあるって。


無意識に、そう、期待していたのかも。

だから、こんなにも


心が痛いんだ。


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