溺愛オフィス


唇を引き結んだその時、頬にポタリ──


空から降り出した雫が当たって……


涙のように伝い、流れ落ちる。


「やだな……降ってきちゃうなんて」


傘、持ってきてないよ。

お見舞いのことばかり頭にあったから……

天気予報、確認するの忘れてた。


「……帰らないと」


本格的に降られる前に、この場から立ち去って雨宿りしないといけないのに。


腰が、持ち上がらない。

足が、動かない。


父の冷たい声が


威圧的な態度が


私の体の自由を奪う。


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