溺愛オフィス


日が暮れ始めると、外は本格的に荒れ始めて。

桜庭さんがつけたテレビでは、間も無く大型の台風が上陸することを告げていた。


ハンガーにかけられている服を触れば、まだ少し湿っている。

でも、着れないわけじゃない。

交通機関がマヒしないうちに帰らないと。

そう考えて、ハンガーに手をかけた時だった。


「焦らなくても、明日には通り過ぎるだろ」

「あ、明日って」

「それより、夕飯何にするか考えろよ」


言いながら、桜庭さんは立ち上がってキッチンへ向かう。

そして、冷蔵庫を開けると何やら物色し始めた。


「外食出来ないのが痛いな……」


……確かに、この嵐の中、外食しにいくのは大変だよね。

台風だとデリバリーも営業中止になるし。


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