溺愛オフィス
【あなたのおかげです】
玉ねぎを刻んで、ウインナーも食べやすい大きさに切って炒める。
ケチャップライスは少し薄味に仕上げ、その上にふんわりとまとめた卵を乗せると、ナイフで切り込みを入れて、ケチャップライスを隠すように広げた。
「はい、桜庭さん。好きなようにかけてくださいね」
そう言って彼に手渡したのは、ケチャップ。
桜庭さんは、左手でそれを受け取ると、自分の分のオムライスが乗ったお皿を右手に歩き、ガラステーブルに置いた。
「蓮井、お前料理出来るんだな」
感心する声に、私は「簡単なものだけですけど」と答える。
私が料理をしている間に教えてくれたのだけど、桜庭さんは昔から料理が苦手らしい。
やる気はあるのに、いつも失敗するんだとか。
なんでも卒なくこなしそうなイメージがあったけど、桜庭さんだって人間だもんね。
苦手なことがあって当然だ。
むしろ、そんな桜庭さんに親しみが湧いて。
私は、自分のオムライスをテーブルに置きながら桜庭さんに視線を向ける。
桜庭さんは悩んだあげく、オムライスに『コーヒー』と書いていた。
……何だか、この短時間で、桜庭さんのイメージがガンガン変わっていく気がする。
もちろんそれは悪くないイメージで、私は知らず笑みを零していた。