溺愛オフィス


「一度、ぶつかってみたらどうだ?」

「……父に、ですか?」


問いかけると、桜庭さんは頷いて。


「目に映るものが全てじゃない。嫌われてると、蓮井が勝手に思い込んでいる可能性だってある」


……確かに、父から嫌いだと言われた記憶はない。

けれど、父と向き合うのは、とても勇気がいることで。

ぶつかった時、明らかにされるのは……


"嫌悪"か"愛情"か。


それを知るのが怖くて、迷い、答えあぐねてしまう。

──だけど。


「……ぶつかってみる、かぁ……」


< 141 / 323 >

この作品をシェア

pagetop