溺愛オフィス
「……桜庭さん」
「ん?」
「ぶつかって砕けたら、飲みに付き合ってくれますか?」
少しだけ、冗談めかしてお願いしてみた。
すると、桜庭さんは唇の端を緩く上げる。
「提案したのは俺だから、それくらいなら付き合ってやるよ」
面倒だけどな、なんて加えられたけど、心底嫌そうには見えなくて。
突き放すようなことを言いながらも、背中を押してくれた桜庭さん。
私は、彼の優しさに「ありがとうございます」と口にした。
昼間はあんなにも重かった心が、今は少し軽い。
それは、間違いなく桜庭さんのおかげ。
心が前を向いたからか、眠気が一気に膨らんで。
テレビから聞こえる賑やかな声と、荒れ狂うような嵐の音を聞きながら私は……
膝を抱えたまま、瞼を閉じて、心地のいい感覚に身を委ねる。