溺愛オフィス
【押し隠すのです】
雨上がりの澄んだ空気のおかげか、月曜日だというにも関わらず私の足取りは軽い。
お気に入りのパンプスの靴音を鳴らし、辿り着いたのはリアライズではなく……
「おはようございます。リアライズの蓮井と申します」
「リアライズの蓮井さんですね。どうぞお入りください」
「ありがとうございます」
都内のハウススタジオだ。
受付スタッフさんの許可を得た私は、地下にあるスタジオを目指す。
今日は、プロジェクトのメインとなるKAORIさんの撮影の日。
現在の時刻は午前8時。
予定より30分も早く着いてしまったのは、朝からソワソワしていたのが原因だ。
その原因は2つ。
ひとつは、KAORIさんと仕事ができるこの撮影を心待ちにしていたこと。
そしてもうひとつは……
「早いな、蓮井」
「えっ? さ、桜庭さん?」
土曜からお世話になった桜庭さんに、会うからだ。