溺愛オフィス


『おはようございます。さ、桜庭さん? 私、いつどうやってベッドに……?』


声かけたら勝手にフラフラ動いたぞ、とか。

気付いたら移動してた、とか。


そんな回答も無きにしも非ずと期待半ばで問いかけたんだけど。


桜庭さんは、少し意地悪そうに口の端を吊り上げて。


『寝てる間は、苦手も難なく克服できるんだな』


想像していた通りの答えを口に出されて、私は口をパクパクさせてしまった。

しかも、追い討ちをかけるように『なんなら、次は隣に寝て俺の目覚まし時計にでもなるか?』なんて言うもんだから。


『な、なな、どういう意味ですかっ』


盛大に動揺してしまった私に、桜庭さんは……


『もちろん、大人的な意味だよ』


止めとばかりに笑みを浮かべたのだ。



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