溺愛オフィス
「桜庭さん!」
「冗談だよ」
「もう……」
こっちは本当に感謝して──
「半分は本気だけど」
「えっ……!?」
「顔、茹でたタコみたいだぞ」
クツクツと喉を鳴らして笑う桜庭さん。
私は熱を持った頬を両手で隠すように覆いながら、からかい続ける桜庭さんを睨む。
だけど、桜庭さんは楽しそうに小さ肩を揺らしていて。
そんな彼の姿に、抗議したい気持ちが萎んで。
代わりに、鼓動が早くなる。
ひとつ打つたびに少しずつ溢れるものは
温かくて、甘やかで。
どこか胸を締め付けるようなこの気持ちは──
「……わ、たし?」
知らず呟いて、その正体に気付きかけた……刹那。