溺愛オフィス
衣装は昨日の夜のうちに搬入していて、2階のメイクスペースにハンガーラックにかかった状態で置いてある。
KAORIさんのスタジオ入りは10時。
その30分前には、カメラマンやヘアメイクさんらとの打ち合わせが予定されている。
「これ、シワ取ってくれる?」
「うん」
壮介君に手渡された衣装を広げ、ハンディアイロンのスイッチを入れた。
本来なら、この仕事はスタイリストさんの仕事。
けれど、今回のプロジェクトに限っては、深水さんと壮介君が兼任している。
「こんな感じでいいかな?」
アイロンをかけた衣装を見せると、壮介君はオーケーを出してくれた。
その壮介君は、衣装についている小さな埃をガムテープで取っている。
「手伝うよ」
「じゃ、柊奈さんはそっちのお願い」
「はーい」
指示されて、私は壮介君の横に並び立ちガムテープを手にした。