溺愛オフィス


「日宮、やめろ」


知った声が聞こえて、壮介君の肩が少し跳ねた。

私を見つめていた大きな瞳がチラリと背後を気にする。

壮介君の肩越しに現れたのは……


「蓮井が怖がってる」


腕を胸の前で組んだ、桜庭さん。

桜庭さんが止めてくれたおかげで、再び私たちの距離は元に戻って。

掴まれていた手首もようやく解放される。

ドッドッと心臓が暴れているのを感じながら、私は安堵の息を吐き出した。


「怖がるって……これくらい別に──」


半ば呆れるような口調で壮介君がそう言いながら桜庭さんを振り返ると。


「"これくらい"? それはお前にとっての、だろ」


桜庭さんは、冷静に言葉を返す。


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