溺愛オフィス
【思いがけないドライブです】
「いけない! もうこんな時間!」
気付けばもう終電間近の時刻。
私は焦り、パソコンを閉じてデスク周りを片付けると、大きめデザインのトートバックを手にし、オフィスを出た。
今日は、プレスの先輩たちが本社にいなかった為、突破的な電話やメールでの問い合わせに対応しつつ、通常の業務を片付けていたら残業になってしまった。
まあでも、元々定時に帰れたことはない部署なんだけど。
静かな廊下で一人エレベーターをまっていると、どこからか扉が閉会する音がした。
そして、足音が向かってきたかと思えば。
「……蓮井?」
なんとそれは、桜庭さんで。
「桜庭さん……お疲れ様です。まだ残ってたんですね」
「それはこっちのセリフだ」
──チン、とエレベーターの到着音がして扉が開く。
二人、エレベーターに乗り込んで私は一階のボタンを押し、桜庭さんは車通勤なのでB2のボタンを押した。
扉が閉まると、不意に昼間の距離感を思い出して一瞬意識してしまう。