溺愛オフィス
【足を引っ張りたくないです】
「そろそろ、かな」
衣装のチェックが終わり、スタッフとの打ち合わせも終えて。
そろそろKAORIさんが到着する頃だろうからと、私はハウススタジオの外に出て、彼女を出迎えようと待っていた。
やがて、一台の黒い車が駐車場に入ってきて。
運転席のドアを開けて出てきたのは、KAORIさんのマネージャー、松岡さんだ。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
私がお辞儀と共に挨拶すると、松岡さんは、彼女が着ている白い清楚なデザインのブラウスに合う、控えめな笑みを浮かべた。
「おはようございます。こちらこそ。ところで、うちのKAORIはもう中に?」
「え?」
車のキーをロックして、松岡さんが私を見る。
「出先から行くからと、KAORIは一人でこちらに向かったはずなんですが……」
「そうなんですか? スタジオにはまだ来られてませんが……」
「やだ。迷ってるのかしら」
そう言うと、松岡さんは茶色い大き目の鞄から携帯電話を取り出した。