溺愛オフィス
スタジオに入ってからのKAORIさんは、特に普通で機嫌が悪いようには見えなかった。
メイクさんとは楽しそうに会話していたし、桜庭さんから服についてのイメージについて意見を聞いている時も、笑みを浮かべていた。
「いいね、流石KAORI! あと2ポーズちょうだい!」
KAORIさんのお気に入りだというカメラマンさんのリクエストに、バックの前に立つKAORIさんが次々とポーズや表情を変えていく。
撮影は順調。
きっと、KAORIさんの気分はもう晴れたんだろう。
何があったのかは知らないけど、彼女の機嫌が直って良かった。
その後、モニターチェックがてら休憩に入って。
私は皆に飲み物を配ってから、用意していた差し入れのお菓子を紙袋から取り出した。
これは、KAORIさんのお気に入りだという有名洋菓子店のベルギーワッフル。
季節によって期間限定のものもあり、それも含めてたくさんの種類を購入してきた。
KAORIさんに少しでも喜んでもらえたらと、そう思って……
「これ、良かったらコーヒーと一緒にどうぞ」
椅子に座って休む彼女の前で箱を開けた。
けれど。