溺愛オフィス


「あーやだ、蓮井さんてば最悪」

「……え?」


KAORIさんは私にきつい眼差しを向けながら。


「モデルにこんな甘いもの出さないでよ」


艶やかな唇を動かし、ワッフルを自分の前から遠ざけるように手で押した。


「ご、ごめんなさいっ」


そうだ。

彼女はモデルだ。

体型維持の為にダイエットだってしてるだろう。

いくら好物だと聞いていたからって、もっと気を使うべきだった。


「気がきかない女」


嘲笑うように言われ、私の体が羞恥と申し訳なさで硬くなる。

すると、いつの間に傍にいたのか。


「柊奈さん、俺これ好きなんだ。もらっていい?」

「あ……うん」


壮介君が、箱をひょぃっと私から奪う。

そして、松岡さんにもひとつ渡すと、他のスタッフにも配りに行った。


< 168 / 323 >

この作品をシェア

pagetop