溺愛オフィス
「庇ってくださって、ありがとうございました」
すると、少しの沈黙の後。
「別に、蓮井の為じゃない」
冷静な声が聞こえて。
私がゆっくり頭を上げると。
「新ブランドの広告塔になるモデルの性根が腐ってたら、ブランドも腐るだろ?」
桜庭さんは、全てはリアライズの為だと。
だから、謝罪も感謝もいらない。
私は何も気にしなくていいのだと……言ってくれた。
優しさが、胸に染み渡る。
今日、胸の奥に押し留め隠したはずの感情が、再び顔を出そうとして戸惑っていたら。
「それより蓮井、そのままで帰る気か?」
「え? あ……」
そうだった。
コーヒーをかぶったから、服に色がついちゃったんだ。
しかも、こんな日に限って淡いミントグリーンのシフォンブラウスなんて着てしまったからちょっと目立つ。
白色のキュロットにもちょっとかかっててそっちも目立つけど……仕方ない。