溺愛オフィス
「KAORIは、このプロジェクトから降りる」
嫌な予感というのは、当たるもので。
「本人が、どうしてもやるつもりはないと言っているそうだ」
現実となってしまった。
「マジかよ……」
壮介君が溜め息混じりに言葉を吐き出す。
正式な回答ということは、KAORIさんのやらないという意見を事務所が承諾したということだ。
つまりは契約が白紙になった……ということ。
松岡さんのフォローのおかげてリアライズの責任問題にはならず、金銭的な問題も特にないと桜庭さんは説明してくれた。
くれたけど……
「一度会って、きちんと話すことも出来ないんですか?」
このまま終わるなんて嫌で、桜庭さんに尋ねる。
「契約解除に関することで必要があれば、松岡さんを通すのみになると彼女本人が言っていた」
そんな……
あまりの展開に、私は力なく肩を下げた。