溺愛オフィス


桜庭さんがそっと息を吐き出して。


「秘書に社長は今日はここに戻らないと聞いたから、夜、俺が直接家に行って話してくる」


仕事の後に兄の家に行って伝えてくる、という事だろう。


また、桜庭さんが1人で伝え、叱責されるのだろうか。

そんな風に想像したら、今度こそそれではいけない気がして。

私は、膝の上に置いていた手にキュッと力をこめる。


「……待ってください」


そして、桜庭さんを真っ直ぐに見つめた。


「私、KAORIさんに会って来ます」

「柊奈さん、もうKAORIサイドが契約を破棄してきたんだ。無理だって」

「無理だって、決まったわけじゃないでしょ?」


だって、まだ会ってない。

謝れてもいない。


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