溺愛オフィス
【はがゆいのです】
「あまり時間はない」
会議室での桜庭さんの言葉に、私と壮介君は頷いた。
KAORIさんの撮影が中断していても、新ブランド出店までのスケジュールに変更はない。
プレスリリースやファッションショーの予定も今のところ変更せず、着々と準備が進んでいる。
進捗が止まってるのはモデル撮影の件のみだ。
「社長には、最悪別のモデルも考慮するように言ってあるが、ギリギリまであがくことも伝えてある」
「納得はしてくれてますか?」
私が聞くと、頷きながら「一応はな」と答えた。
続けて、会議テーブルの上の書類をひとつにまとめると桜庭さんは席を立って。
「今日は俺が話に行ってくる」
KAORIさんの元に行くことを告げる。
どうやら今日は、モデル部の部長さんとも話せることになったらしく、予定より少し早めに社を出ることも伝えられた。