溺愛オフィス
「だってさ、柊奈さん。よく頑張りましたー」
またしてもからかうような口ぶりの壮介君。
「俺が頭ナデナデしてしんぜよう」
先に"頭を撫でる"と宣言してくれたのは、先日の私の言葉を覚えてるからだろう。
いたずらっ子のような笑みを浮かべ、壮介君の手が、まだ座ったままの私の頭を撫でようと伸びてくる。
苦手、だけど。
頭を撫でられるくらい、大丈夫。
大丈──
「日宮、これ、俺のデスクに置いといてくれ」
言い聞かせるようように心の中で呟いていた私の耳に、桜庭さんの淡々とした声が届いて。
私へと伸ばされていた壮介君の手には、打ち合わせで使用していた資料たち。
「……わざと?」
言いながら、壮介君がにっこりする。
それに対して桜庭さんも同じようににっこりと微笑み。
「よろしくな?」
強制的に資料を持たせた。