溺愛オフィス


壮介君は私の頭を撫でるのを諦めたのか「はいはい」と面倒そうに零して会議室を出て行く。

その後ろに続くように桜庭さんが歩き出したのを見て、私も会議室を出ようと腰を上げた時。


「蓮井には、これな」


私を振り返った桜庭さんの手が、私の頭に伸びてきて。


優しく


ひと撫でされる。


その顔には、見惚れるような柔らかい笑み。


すぐにてのひらの温もりは離れて、桜庭さんは会議室を出て行ったけど……


私の足は、立ち止まったまま。


だって、やっぱり



嫌じゃないのです。



それどころか、ドキドキしてる自分がいて。


右手でそっと自分の頬に触れれば、何だか熱を帯びているような気がした。





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