溺愛オフィス


桜庭さんがKAORIさんの事務所に向かったあと、私も鞄に書類をつめて、早乙女チーフとショー会場の下見に出た。

会場は広く、設備にも申し分もなくて。

早乙女さんと私は、ここで行われるファッションショーを想像し、期待で胸を高鳴らせた。


「それじゃ、また明日ね」


下見も無事に終わって、駅の改札をくぐると私に手を振る早乙女さん。

早乙女さんはこのまま直帰。

私も直帰していいと、早乙女さんからも桜庭さんからも言われてるんだけど……


会場の下見に出る前、オフィスのホワイトボードに、桜庭さんが戻る予定があるのを確認していた私は、話し合いの結果が気になるので会社に戻ることにした。


電車に乗ると、いくつかの駅を通過したところで電車の窓に雨粒が当たっているのに気付く。

最初は緩やかだったそれは、私が降りる頃には強さを増していて。

私は携帯していた折りたたみ傘をさすと、必要以上に濡れないようにと会社へと急いだ。


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