溺愛オフィス
「大丈夫……とは?」
何の話をしているのかわかりかねて、首を傾げた私に松岡さんは少し言い辛そうに唇を動かす。
「部長を交えた話し合いのあと、桜庭さんはKAORIを説得しようと部長抜きで少しお話することを希望したんです」
その時、松岡さんも同席してくれと桜庭さんに言われたので、同席したのだとか。
「それで……デートしたら、とか、桜庭さんを困らせることを言っていたんですけど……」
桜庭さんは、拒否したらしい。
トップモデルのKAORIさんに変な噂が立つのよくないだろう、という理由を添えて。
そして、きちんと考えてくれとお願いしたそうだ。
その際の桜庭さんの態度は落ち着いていたらしい。
撮影の時のように、棘のある言い方はしていなかったと、松岡さんは話した。
けれど、あくまで仕事として接する桜庭さんに、KAORIさんはイライラしたようで。
『じゃあ、一陽が私に頭を下げるなら考えてもいいけど』
『ちょっと、KAORI! あなたいい加減に──』
『松岡さんは黙ってて。どうする? 一陽』
『…………』
黙る桜庭さんを見て、KAORIさんはクスクスと笑っていたらしい。