溺愛オフィス


──夜の帳が下りて。


久しぶりに仕事が早めに終わった私は、美咲に連れられて、彼女のオススメだという会員制のBARに連れて来られていた。

上手に間接照明が使われたオシャレで静かな店内。

美咲の話によると、ここは芸能人がお忍びで来店する隠れ家なんだとか。

で、どうやらここのオーナーが美咲の元彼のようで。


「今日は来てないみたいだけど、サービスしてくれるって」


カウンターの店員さんに交渉したのか、ニコニコしながら美咲がテーブルに戻ってきた。


「ではでは、かんぱーい」


グラスを重ね、澄んだ音を響かせる。

やがて運ばれてきたオードブルプレートをつまみながら、私は美咲の恋バナを聞いていた。

医者の彼氏さんに二股されてたから、別れるか迷ってる、とか。

秘書君は一途過ぎてちょっと重い、とか。

合コンで出会った人に好みのタイプがいるから、今頑張ってる、とか。

相変わらず、美咲は美咲なりの人生を謳歌しているようだ。


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