溺愛オフィス
【女と女の勝負です】
ただそこに立っている姿が、雑誌の一ページのように見えるのは、やはり彼女がトップモデルだからだろう。
KAORIさんが小首をかしげると、彼女の耳から下がっている大き目のフェザーピアスが揺れた。
そして、朱赤に彩られた唇が動けば。
「蓮井さん、しつこい」
文句を口にされる。
「偶然です!」
ストーカーみたいに言わないで欲しいと頭の片隅で言い返しながら、私は席を立った。
その瞬間、閃く。
これはチャンスじゃないかと。
いつもは仕事としてしか会ってなかった。
でも、私は今プライベート。
そして──
「KAORIさんは、お仕事でここへ?」
「今日はオフ。ここで友達と待ち合わせしてるの。まだ来てないみたいだけど」
「そうなんですね」
KAORIさんもプライベート!
仕事を抜きに話すことができたら、何か進展あるかもしれない。
父の話をした時、桜庭さんも言っていた。
一度、ぶつかってみたらどうかって。