溺愛オフィス
もしかしたら断られるかもしれないけど、ここは頑張ってみよう。
ここで頑張れたらきっと、父にもぶつかれる。
私はそう考え、笑みを浮かべた。
「もし良かったら、お友達が来るまでお話しでもしませんか?」
私の誘いに、KAORIさんは片眉を上げて。
「イヤ。どうせまた撮影のことでしょ」
「それをしたいのは山々ですけど、プライベートですし、世間話とか?」
「……どうして私が、蓮井さんと世間話なんて──」
しなきゃならないのか、と文句を言いたかったのだろうけど。
「さすがトップモデルさんっ」
いきなり横から割り込んできた美咲の声に遮られた。
「メディアで拝見してても綺麗なのに、間近で見るとさらに綺麗ですね」
KAORIさんは面食らったようだったけど、褒められて悪い気はしないのか「ありがと」と僅かに表情を緩める。
美咲は決して騒いでいるわけじゃない。
あくまで落ち着いて、けれど明るい声でKAORIさんをどんどん褒める。