溺愛オフィス


私は昔、暗くて地味でイジメられていたのよ。

でも、このままじゃいけない。

自分が変わらないといけない。

そう思って、自分に合うメイクやファッションを勉強して、少しずつ変わる努力をしたの。

不思議なんだけど、そうしているうちに心のありようも変わって、今の私になれた。


「それを聞いて、感動したんです。メイクやファッションで人はこんなにも輝ける可能性があるんだって。それで、私も変わりたいって思うようになって……」

「リアライズブランドにバイトとして入ったのか」


信号が赤に変わって、桜庭はブレーキを踏みながら言った。


「はい。だけど、働くようになってお客様の反応や笑顔を見てからは、自分だけじゃなく、お客様にもたくさんの可能性を感じてもらいたくなって。それで、本社でもっと色々と勉強したくなったんです」

「ふーん……」


ふ、ふーんって、それだけですか。

ちょっと熱く語ってしまっただけに、なんか恥ずかしい。

こんな詳しく話さずに、もっと簡潔に話すべきだったかと後悔していると。


「悪くないな」


桜庭さんは、口元を緩めた。

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