溺愛オフィス
KAORIさんは何も言わなかった。
ただ、少しの沈黙の後、私を見て。
「私と勝負しない?」
突然、勝負を持ちかけられた。
しかもその勝負内容が……
「お酒の飲み勝負!?」
「そう。強くなりたいんでしょ? 変わりたいんでしょ? だったら、私の記録を破ってみせて」
そうしたら、契約を継続してあげる。
にっこりと微笑まれて、私は言葉を詰まらせた。
いきなりの展開に、ちょっと思考が追いつかない。
というか、お酒に強いならいざ知らず、私はそんなに強くない。
最初から負けが見えてる勝負なのだ。
だけど、契約を継続してくれるという言葉は、破棄の話から初めて聞いた言葉。
このチャンスを無駄にしたくはない。