溺愛オフィス
「ダメですよ、KAORIさん。こんなやり方、下手したら柊奈が倒れちゃう」
「お酒に弱いなんて知らなかったの」
ごめんなさいとKAORIさんは謝ったけど、その口調は悪いと思ってはないものだった。
「あ、友達来たみたい。それじゃ蓮井さん、勝負はあなたの負けってことで。さよなら~」
クスクス笑うKAORIさん。
彼女がテーブルの上に数枚のお札を置いて、去ろうとした刹那。
「KAORIさん。あなた本当に素敵。だけど、その数倍、柊奈の方が素敵だとあたしは思うな」
「……参考までに聞かせてくれる? どの辺りが?」
「ココが」
トントンと、美咲が自分の心臓の部分を指で示すと、美咲とKAORIさんの間に火花が散った。
KAORIさんは美咲に対して悪態をついたようだけど、最早私の意識が朦朧としてきて、何を言っていたかわからない。
「……ったく、やな女」
近くで美咲が溜め息を吐くのが聞こえた直後。
「柊奈? 大丈夫? 柊奈ー?」
私は瞼を閉じて、ダウンした。