溺愛オフィス
「……じゃ……しまーす」
「ああ……けて……れよ」
──バタン。
何かが閉まるような音がして、私は閉じていた瞼をうっすらと開いた。
視界に移ったのは、BARのテーブルではなく、ガラス越しに映し出されたネオン輝く夜の街。
座っている椅子も、背もたれの低いものじゃなくて。
「……何で、よっかかれるの……」
頭までしっかりと寄りかかれるものに変わっていた。
「寝てろ。酔っ払い」
あれ……?
おかしいな。
桜庭さんに似てる声が聞こえる。
聞こえてくる方向に顔を動かしてみると、そこには桜庭さんがいて。
だけど、どうしてと問いかけることも出来ないまま、私はまた瞼を閉じた。